アングル:米VIX逆張り証券の損失、個人投資家を直撃

[ニューヨーク 7日 ロイター] – 米国株が急変動しないことに賭ける上場投資商品(ETP)の価格が、5日の株価急落とともに急落した。複雑な金融商品にもかかわらず、最近では多くの個人投資家が手を出しており、急落によって傷を負っている。

こうした商品に数十万ドルを投資していたニュージャージーの個人投資家、DJ・トンプソンさんは、過去5カ月の利益が1日で吹き飛んだ。「たくさんの投資家が悲惨な目に遭っているはずだ」と話す。

この金融商品は、「恐怖指数」として知られるボラティリティ・インデックス(VIX)<.VIX>が上昇しないこと、つまり株価が急変動しないことに賭けるもの。米株は過去1年間、上昇基調を続けてきたが、それに飽き足らず、さらに大幅な利益を求める個人投資家と機関投資家から資金が流れ込んでいた。

しかし先週末からの株価急落でVIXが跳ね上がり、こうした商品は大きな損失を出した。

クレディ・スイス<CSGN.S>と野村証券<8604.T>は、これら商品の取引を停止し、早期償還すると発表。他にも同様の上場商品がいくつか取引停止となった。

VIXをショート(空売り)にする投資戦略は以前から、機関投資家の間では主流だった。しかし近年、この戦略に関するETPが導入され、個人投資家にも参加の道が開かれた。

「残念ながら、ボラティリティに慣れていない多くの人々は、リスクがあることが分かっていなかった」とトンプソン氏は言う。

クレディ・スイスは6日、同社が2010年に立ち上げたベロシティシェアーズ・デーリー・インバースVIXショートタームETN(XIV)<XIV.P>の取引を20日に停止すると発表した。

トムソン・ロイター傘下のリッパーによると、XIVの時価総額は2日時点で16億ドルだったが、最終的に出資者に返還される金額はわずかにとどまりそうだ。

関係筋によると、クレデイ・スイス自体はXIVへの投資を完全にヘッジしている。

モーニングスターのデータに基づけば、ドイツ銀行もXIVの主な保有主体で、持ち分は4%強。しかし市場関係者の話では、こうした機関投資家はヘッジしている可能性が高く、経営を揺るがす心配はなさそうだという。

痛手を被りそうなのは、この市場の新顔である個人投資家だ。

VIXをショートにする金融商品は、リスクを熟知した投資家向けの複雑な商品として販売されているが、利益が出ているのを見て個人投資家も殺到していた。

モーニングスターによると、ファンドや機関投資家によるこれら商品の保有比率は2割にとどまっており、個人投資家が大量に保有していることが分かる。

チャールズ・シュワブのトレーディング・デリバティブ担当バイスプレジデント、ランディー・フレデリック氏は「現実には、だれでも同じようにアクセスできる市場になっている。いくら洗練されたトレーダーやヘッジファンド、機関投資家向けに設計した商品でも、取引所で何らかの隔離を施さない限り、買いたければ個人投資家でも買えてしまう」と話した。

市場参加者によると、過去半年間でヘッジファンドがこうした商品から手を引き、代わりに個人投資家の資金が流れ込んだ。

チャールズ・シュワブのフレデリック氏は、投資家の損失が大きいため、規制当局はこれらの商品が個人投資家にふさわしいかどうか検討に乗り出すだろうと述べた。

 
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