インタビュー:成長事業は健康領域、必要に応じてM&A実施=キリンHD社長

[東京 22日 ロイター] – キリンホールディングス<2503.T>の磯崎功典社長は22日、ロイターとのインタビューに応じ、ビール、飲料の収益性向上に加え、健康領域を事業の柱として成長させる方針を示した。全てを自社で行うことは考えておらず、必要に応じてM&Aも実施する。

<「未病」領域>

先進国ではビール消費がダウントレンドに入っており「正直言うと、ビールと飲料が右肩上がりならば、別の事業をやる必要はないと思う。しかし、それでは、サステーナブルな成長はあり得ない。伸びが鈍化していくことは想像に難くない」と述べ、高齢化社会で関心が高まる「健康領域」を成長事業として育てていく方針を示した。

磯崎社長は「10年経って振り返ると、キリンのポートフォリオが少しづつ変わってきたと気付くと思う」と述べた。

また、M&Aについても「必要に応じてM&Aをやっていこうとするのは健康領域だ」と述べた。以前なら、少し時間がかかっても自前でやっていたが、現在は「時間は買うもの。自分たちに足りないものはお金で買う」という考え方に至っているという。ただ、何千億円もかけて企業ごと買うのではなく「自分たちが長い間培ってきたものにアドオンする形」という考えだ。

医薬品は、グループの協和発酵キリン<4151.T>が担っており、成長を考える「健康領域」は「未病」の分野。磯崎社長は「何十年もの間、免疫の研究・開発をしてきた。免疫を含む研究を活用していく」とした。昨年「プラズマ乳酸菌」を配合した商品をグループ横断的に扱うブランド「iMuse(イミューズ)」を立ち上げ、飲料やヨーグルト、カルビー<2229.T>と連係したポテトチップスなどを発売している。「iMuse」の販路を広げるほか、新たな研究結果を商品につなげ、事業の拡大を図っていく。

<海外ビールの大きなM&A案件はない>

同社は、昨年12月に行われたベトナムの国内ビール最大手、サイゴンビール・アルコール飲料総公社(サベコ)株売却への応札を見送った。磯崎社長は「ビールのM&Aの最後の出物と言われたのがサベコだったが、意思を持って辞めた」と述べた。価格や資本構成、デューデリジェンスがなかったことなどが見送った理由だという。その上で「今後、海外でビールの大きなM&A案件はほとんどないと思う」と述べた。

同社は、昨年6月にブラジル事業の売却を完了。10月にはバイオ医薬品の米アムジェン<AMGN.N>との合弁を解消、保有株式をアムジェンに売却することで合意した。また、低収益だった飲料事業のキリンビバレッジの営業利益率(日本基準)は2015年の1.5%が2017年は6.3%に高まるなど、課題解決が進んできた。

今後、キリンビールとキリンビバレッジについては、グローバル企業並みに収益性を高める。IFRSでキリンビバレッジは事業利益率10%、キリンビールは酒税抜きの売上収益に対する事業利益率25%(17年は19%)を目指す。

2019年12月期から始まる次期中計については「今中計にあった低収益事業の再生・再編はなくなる。安定的にどの事業も収益が上がるように作り上げる。基盤・土台作りではなく、収益を成長させる段階に入る」と述べた。

(清水律子 浦中大我)

 
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