デンソーや日立などが手術の「見える化」実現、熟練医の技術共有

[東京 9日 ロイター] – デンソー<6902.T>や日立製作所<6501.T>などは9日、手術の「見える化」を実現する「スマート治療室」の臨床試験を開始すると発表した。あらゆるモノがネットにつながるIoTを活用して多種多様な医療機器の情報が連携できる手術室を、日本医療研究開発機構(AMED)を中心に東京女子医科大学など5大学と11社が共同で開発した。

現行の手術室では、使われる数多くの医療機器のメーカーが異なり、医療機器によって通信規格なども違う。「スマート治療室」ではメーカーや通信規格の異なる多種多様な医療機器を接続・連携させることが可能。デンソーが中心となって開発したミドルウエア「オペリンク」により、手術の進行や患者の状況などの情報を瞬時に時系列をそろえて統合することができる。

異なるメーカーの医療機器の情報をリアルタイムで加工・融合することができるのは、世界初という。信州大学の病院で標準モデルの治療室を設置し、今月中に脳腫瘍の患者への臨床研究を始める。

また、映像だけでなく、手術中に起きた事象や発したコメントを残すこともできる。手術室の外でもリアルタイムで患部の映像やデータを共有でき、外にいる医師が手術中にアドバイスを送ることも可能だ。医療プロセスを透明化することにより、手術の精度や安全性が向上し、医療ミス防止にも結びつき、患者の安心にもつながる。

プロジェクトを統括する東京女子医大の村垣善浩教授は同日の会見で、今の手術では医療機器がほぼ単独で動いており「(医療機器それぞれの持つ)情報がほとんど捨てられている」と指摘。各医療機器のデータをつないで「単なるスペースだったオペ(手術)室それ自体を1つの医療機器にする」と説明した。

また、海外の病院への事業展開も検討しており「国際標準化も狙いたい」と意欲を見せた。

デンソー新事業統括部メディカル事業室の奥田英樹室長は、熟練医の頭の中だけに存在していた情報やノウハウを可視化し「若手の先生方に全て開示することで、誰でも熟練医のような判断ができる。手術の質や効率を継続的に改善する」と語った。

デンソーは、工場で普及しているミドルウエアを中核技術として医療用にも使えるよう開発。日立は自社の磁気共鳴画像装置(MRI)と組み合わせるなどしてパッケージ化し、販売を担当する。2019年度の事業化を予定。価格は数億円程度で、20年度から10年間で売上高300億円を目指す。

(白木真紀)

 
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