仮想通貨の規制強化へ、資金調達の開示義務など=金融庁・報告書案

[東京 14日 ロイター] – 金融庁は、企業などが独自の仮想通貨を発行して行うICO(イニシャル・コイン・オファリング)など、仮想通貨に関する規制を強化する。14日午後に開く有識者会議で報告書の原案を示し、取りまとめを行う。来年の通常国会で金融商品取引法などの改正を目指す。関係者が14日、明らかにした。

ICOは、企業などが「トークン」と呼ばれる独自の仮想通貨を発行して行う資金調達手段。ネットを通じ、世界の投資家から迅速、簡易に資金を集める手法として主に海外で普及し、資金調達額は2018年の1―10月に約167億ドルと17年年間の3倍に上った。

金融庁はICOについて、既存法制の枠内で対応してきたが、IPO(新規株式公開)の目論見書に当たる「ホワイトペーパー」の記載内容に規制がないことなどから、詐欺的なケースが多発し、利用者保護のために規制強化が必要と判断した。

報告書案は、ICOの性質に応じた規制の必要性を明記。トークンの保有者が投資先の事業の収益から分配を受けるなど投資の側面が強い場合には、金商法の開示規制を適用し、第三者が発行者の事業や財務状況を審査する枠組みを構築することが適当だとした。

他方、トークンがモノやサービスを受ける権利を表す場合は、トークンを仮想通貨と同視し、資金決済法を適用する。

投資に当たるトークンを販売する業者は、第一種金融商品取引業者と同様に整理する必要があると指摘。第一種金商業者は一般的な証券会社が該当し、登録制が取られている。利用者保護の観点から、勧誘も制限し、一般投資家への流通を抑止する。

一方、仮想通貨取引の約8割を占める証拠金取引については、証拠金倍率を最大25倍とする業者もある中、報告書案は「実態を踏まえた適切な上限が適当」とした。

また、金融商品取引所での仮想通貨デリバティブの上場について、報告書案は「積極的な社会的意義を見出しがたい」と指摘。「金融商品取引所のような多数の市場参加者による取引が可能な場で取り扱う必要性は、現時点では認められない」とした。

今年、仮想通貨取引所で顧客から預かった仮想通貨が流出する事件が相次いだ。有識者会議は、預かり仮想通貨の信託保全の是非も議論したが、報告書案は、信託銀行でセキュリティ体制を構築する必要性を踏まえれば「現時点で、全種・全量の受託仮想通貨の信託を義務づけることは困難」と結論づけた。

(和田崇彦)

 
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