【動画ニュース】バッテリー泥棒が感電死 電動バイクの所有者に対し損害賠償命令=中国

湖北省武漢市の劉さんが所有する電動バイクからバッテリーを盗もうとした泥棒が漏電により感電死したところ、その遺族が劉さんに対し、20万元(日本円でおよそ320万円)の損害賠償を求めました。裁判の結果、遺族に精神的苦痛を与えたとして劉さんは5万元(日本円でおよそ80万円)の支払いを命じられました。この裁判について、中国国内では論争が湧き起こっています。

劉さんが住んでいるのは古い住宅団地で、電動バイクがあちこちに駐輪されています。敷地内に充電設備がないため、住民らはマンションの部屋から延長コードを引いて充電をしています。泥棒がバッテリーを盗もうとした日は大雨で、バッテリーの漏電が感電死の原因でした。

12月19日の北京青年報に、この事件に関する記事が掲載されました。ここでは、劉さんの駐輪と充電行為が、団地の規則に違反しているのは明らかだとしつつも、この行為自体は犯人のいかなる権利も侵害してはおらず、犯人の死亡と車両所有者の充電行為にも、何の因果関係も認められないと指摘しています。犯人が盗難に及ばなければ、感電することもなかったからです。

ニューヨーク大学客員教授、人権派弁護士 滕彪氏

「中国の民法の規定から見ても、この所有者には何の過失もない。よって権利を侵害した責任を所有者に負わせる理由がない。今回の判決には何の法的根拠もない」

中国の元法学博士 張傑氏

「住宅団地の管理問題、つまりこうした電動バイクの充電行為が、ある問題を反映している。もし雨が降って、保護設備がなかったとしたら、一般の歩行者や遊んでいる子供でも感電する可能性があるという点だ。この団地には安全面で問題があるのだと容易に想像できる」

この報道によって激論が湧き起こりました。あるネットユーザーは「裁判所は犯罪を奨励している。これで法治国家を標榜するとは笑わせる」と投稿し、別のユーザーは「賠償しろだと? だったら団地の不動産屋や電力会社、気象台、電動バイクディーラー全部に通告するんだな」と憤りを隠せません。他にも「南京の裁判官を皮切りに、中国の道徳観念が法廷から崩壊していく」との投稿も見られました。

2006年11月、南京市の青年、彭宇さんは路上に倒れていた老人を親切心から助け起こし、さらに検査を受けさせるため病院に送りましたが、まさかその後、老人から損賠賠償を請求されることになるとは思いもしませんでした。結局、彭宇さんは裁判所から1万元(日本円でおよそ16万円)の損害賠償を命じられました。この時に裁判官が発した「君が老人をはねた犯人でないのなら、なぜ助けたりしたのだ」という言葉が、当時の論争の焦点となりました。

ニューヨーク大学客員教授、人権派弁護士 滕彪氏

「法的に言うと、関連の規定に該当していないだけでなく、証拠も不足している。社会的な道徳通念から見ても、この事件はさらに悪影響を及ぼしている」

ニューヨーク在住の人権派弁護士・滕彪さんはまた、中国の司法界には2つの問題が存在していると指摘します。1つ目は司法機関が独立していないこと、もう1つは裁判官のレベルが低く、裁判の多くがいい加減に行われており、他の基本的な法律も、社会への影響も考慮されていないことです。その結果、判決は裁判官の主観に左右されてしまいます。

 
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