実質賃金、18年「決まって支給する給与」は2年連続減少=勤労統計

[東京 8日 ロイター] – 厚生労働省が8日発表した2018年の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は、定例給与と残業代を合わせた「決まって支給する給与」でみると、前年比0.3%減少となり、2年連続でマイナスだった。

ボーナス等を含む「現金給与総額」でみた実質賃金は、前年比0.2%増だった。エコノミストの一部からは、賃金上昇の実感を雇用者が得るには、決まって支給する給与の上昇が必要との声が出ており、個人消費の先行きを巡り、議論が活発化しそうだ。

今回の結果は、不適切な調査手法が指摘され、再集計したベース。

8日発表のデータによると、実質賃金ベースでみた18年の定例給与と残業代を合わせた「決まって支給する給与」は0.3%減となり、17年の0.1%減に続き、2年連続のマイナス。

ロイターが1日に示した11月分までの発表値をもとにした18年の実質賃金「決まって支給する給与」の伸び率試算の0.4%減に近い数字だった。

ボーナス等を含む「現金給与総額」でみた実質賃金指数は100.8で、前年比0.2%増。これは、ボーナス支給水準が高く、昨年12月の速報値が同1.4%増となったことの効果とみられる。

BNPパリバ証券・シニアエコノミストの加藤あずさ氏は「現金給与総額は年間の収入全額を把握するのに適しているが、雇用者が持続的に賃金が上がっていくとの実感を持つには、決まって支給する給与が上がる必要がある。これが2年連続で減少していると、将来不安も消えず、消費にもつながりにくい」と指摘している。

他方、18年の名目賃金をみると、現金給与総額は月額32万3669円で前年を1.4%上回り、5年連続増となった。

このうち所定内給与が24万4733円と前年比0.8%増、特別に支払われた給与が5万9036円と同3.7%増となり、給与総額を押し上げたと同省は説明している。

特に今回発表された12月の現金給与総額が、同1.8%増の56万7151円となったことが寄与。確報値でマイナスに転じなければ、月次での伸びは17カ月連続となる。

厚労省が「前年同月分」「当月分」とも集計対象とした共通事業所による実質賃金は、公表を見送った。「年平均を作成するのになじまない構造になっている」(同省担当者)と、なお開示に慎重な姿勢を崩しておらず、「アベノミクス偽装」と追及する野党が反発を強めそうだ。

(中川泉、山口貴也 編集:田巻一彦)

 
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