中国がますます共産主義化?
習近平 マルクス主義を猛プッシュ!中国社会の全体が従わなければなりません。
チャイナ・アンセンサードにようこそ。キャスターのクリス・チャペルです
鏡に映る自分を見て、自問したことがありますか?
「完璧な共産主義者になるために最善を尽くしたか?」
引っ掛け問題だよ。気高いプロレタリア革命には、ブルジョアの鏡を必要としないから。
しかし、これが中国の指導者習近平の質問なのです。
中国共産党は 世界最大の共産党団体であり、9千万人もの党員がいます。
時々、なぜ党員になったのか、思い出す必要がある。つまり、共産主義がいかに素晴らしいことかを。
100年の間 1億人の人々を死なせてしまい、確かにすごい成果と言えます。でも、今日の中国では人々は 、マルクスや共産主義にかつての献身的な情熱を持っていないようです。
例えば、97%の中国企業は民間企業であり、中国には 世界の億万長者の3分の1が います。
そして中国公認の国営労働組合「中華全国総工会」は、労働者が団結して交渉することを防ぐ目的で設立されたものです。
どうやら中国はマルクスから少々離れているようですね。
だからこそ、ここ数年の間、習近平氏が 人々の共産主義への情熱を再び燃えさせようとごり押ししているのです。人々はかつてそうであったように。
確かに、人々が無我夢中で共産主義に情熱を傾けた時期もありました。習近平氏が文化大革命の再来を望んでいるということではありません。
しかし、今は共産党の党首にとって厳しい時です。ほとんどの中国人はもはや共産主義を本気で信じていないように見えるから。
独裁国家の人々を味方に引き戻すには、トップからの命令は何よりも有効です。
習近平氏が、中国社会全体に学ぶようと指示したものは 「マルクス主義」。もっと正確に言うと「中国的特色ある社会主義」。
中国共産党95周年を記念する演説で、習近平氏がこう述べました。
「歴史が教えてくれました。人々が中華民族の大いなる復興のために、中国共産党の導きに従ったことは 正しかったし、中国的特色ある社会主義を目指している。中国共産党の指導も 正しいなのです」
「マルクス主義は我が党の思想指導の根本と据え置くべき。さもなくば 我が党は、その魂も方向性も 失ってしまうであろう」
無神論者と自称している共産党に、失う魂があったんですね?
習近平氏は自ら率先してお手本を示しています。
2017年 2期目の党首に「当選」直後の習氏は、新指導部メンバー全員を引き連れ上海に赴き、中国共産党の発祥の地で、拳を上げて党創設者達を称え、 忠誠を誓ったのです。
香港中文大学の非常勤教授林和立によると、「いわゆる『中国的特色ある社会主義の新時代』に、創設者達の本来の価値観を守り抜こうという党の誓約の原点への回帰であり、つまり、正統なマルクス主義や毛沢東思想から絶対脱却しないこと、西洋の価値観を決して受け入れないこと」
しかし、共産主義は元々西洋から来てるんですけど…
数か月後、習近平氏は憲法に大きな変更を加えました。
先ずは、ご自身の「習近平による新時代の中国的特色ある社会主義思想」を中国共産党の党規約と中国憲法に書き加えて、続いて中国憲法に 次の文言を追加しました。「中国共産党の指導的役割は、中国的特色ある社会主義の決定的な特徴である」
この新しい文言により、中国政府への直接支配権を公式に共産党に授与したのです。
まあ、以前から実質に政府を支配していたけどね。ただ今は、国家憲法に明記されて合法になったという訳。
まさに、中国の政府システムに中国共産党が 寄生物のように吸着して、上から本体を支配しているという構図であり、「スターゲイト」に出て来る寄生怪物 ゴアウルドみたいですね。
今やそれが 法律となったのです。
憲法によると「社会主義システムが中華人民共和国の根本体制である」。言い換えれば、中国は中国共産党が主導する一党独裁国家で、それ以外は全て憲法違反なものであるということ。
事実関係をはっきり整理できて 良かった!
習近平氏は中国9千万人の共産党党員にも、更なる圧力をかけています。
“党員は無神論者であるべしの他に 習氏の命令は「一般党員、幹部、特に上級幹部は共産党宣言をよく学び、よく従うべし」
国営メディアも最近、党員向けに警告を発しました。信じるべきものはマルクスであり、お化けや幽霊ではない。
「断固として防ぐべきなのは、マルクスやレーニンではなくお化けや幽霊を信じること。真実ではなく、お金を信じること」
待って!何をどうすれば良いか混乱してしまったよ。
お金を信じていいの?だめなの?お金はお化けや幽霊と同じ迷信だっていうこと?訳がわかりません。
ともあれ、これは党員だけの話ではないのです。
子供たちのことを、党が 忘れる訳がありません。
「中国のX世代やミレニアム世代の若者が党を単なる腐敗老人たちの集まりだと見なしている」
これを危惧した党は、馬力全開にして共産主義を格好いいものに仕立てようとしています。
カール・マルクスのラップとか、カール・マルクスのトークショーに、カール・マルクスのアニメまでね!
市場原理の需要から生れたのは 一つもありません。まさにマルクスが望んでいたようにね。
習氏は、学校でもイデオロギー教育を強調しています。
「習氏は、イデオロギーや政治の授業におけるマルクス主義の指導的役割を強調し、中国の教育は人民のため、党の統治のため、そして中国的特色のな社会主義の発展のために行うべきだと述べた」
その教育は 幼少時から始まるのです。
習氏の言葉で言うと、中国は幼児からスタートして、「中国共産党の統治と中国の社会主義体制を支持する若者の世代を次々と育成しなければならない」
そういう訳で、こんなニュースをよく見かけるのです。芽生えて花咲いた中国の自由民主主義が、習近平氏に踏みにじられたと仄めかします。
しかし、本当はそうではありません。ほとんどの変化は、表面的なものに過ぎないのです。
習近平氏は、マルクス主義とレーニン思想を学ぶように人々に強く要求していますが。しかし実際に、集団農場化や地主殺しのような日々に戻ろうとしている訳ではありません。
無秩序でやりたい放題時代が もう過去のことです。共産主義が 富の再分配よりも遥かに多くのことを狙っているのです。
共産主義体制の本質は、社会全体を隅々まで支配することです。
中国共産党は、1949年権力を握った以来、あらゆる組織を支配し、歴史を改ざんし、ニュースを操作し、階層を問わず社会全体を監視し、人々の自由な言論を禁止し、神仏への信仰を妨害し、異議を唱える人々を 再教育したり殺害したりしてきました。
こういったことは 実際、1970年代後半の経済改革以降も 全く変わっていません。つまり中国はずっと100%の共産主義のままなのです。
経済はどうでしょうか?
確かに中国はもはや、人々が共同で住み働くような共産集団制ではありません。しかし、政府が 中国全土の土地を所有し、国営企業が 主要産業を独占し、政府高官が 経済活動を常に干渉しています。
つまり、国家は未だに生産手段をほぼ支配しているというのです。
中国の人々は、今ではお金を稼ぐことが許されていますが、しかし金持ちになれるのは、党の命令に従う者だけです。だから、習近平がいくら声高くイデオロギーを強調しても、中国は実際にもっと共産主義化にならない訳です。
どちらかと言うと、中国の共産主義がますます明確になってきたのです。特に海外から見ると。
中国をそれ以上共産化にすることができないのに、なぜ習近平氏はマルクス主義をごり押しするのでしょう?
いくつかの可能性があります。
一つ目は、習氏は共産主義を心から信奉しているのかも。習氏が唯物弁証法についての論説文を発表した時、実は本気だったのかも。
私にはわかりませんが。
中国の指導者にまで上り詰めたくらい、すごいポーカーフェイスなので、実際は何を考えているのか誰もわからないのでは?「唯物弁証法なんて大嫌い」だったりして。
二つ目の可能性は、マルクス主義をごり押しすることで、批判者の口を塞ごうとしているかも。習氏は途方もない権力を一身に集約してきて、歴代の中国指導者の中で最強の肩書を持つ指導者となりました。
しかし、もし習氏が党を見捨て、皇帝又は独裁大統領になろうとする兆しがあれば、党は 彼を八つ裂きにしてしまうのでしょう
。
習氏は力を得るため、隠れ蓑として共産思想を前面に押し出して、他の党高官からの批判を躱しているのかもしれません。
「李克強さん、唯物弁証法に何か問題があるとでも? まさか!」
三つ目の可能性は、党の強硬派と折り合うため。
現在進行中の中国共産党の内部権力闘争に是非ご注目!まさに権謀術数ドラマの現実版です。
さっき言った、上海行きのことを覚えていますか?上海は中国共産党の誕生の地であるだけではなく、習氏にとって最大の政敵、江沢民氏の権力基盤でもあります。
習氏は国家主席の任期制限を廃止して、永久に権力の座に居座りたい。漫画キャラのスケレターみたいにね。
しかし、改正案を通過するためには江氏の本拠地に赴き、公に党への忠誠を再度宣誓しなければならなかったようです。
換言すると、習近平が党に服従したのであって、党を乗っ取ったのではないということです。
「唯物弁証法は最高!党がそう言ってるからです」
どんな結末になるか、見守っていきたいと思います。
大事なのは、見た目では習近平氏が共産主義の価値観を押しているようで、実際中国は少しもバリバリの共産主義から逸脱していません。常に共産主義なのです。
あなたはどうお考えですか?コメントをお寄せください。
最後に、Patreonを通じて番組をサポートしてくれるファンからの質問に答えるコーナーです。
Ethan Fredsti さんの質問です。「習近平がゴルバチョフと同じことをしたら、どうなるでしょう?」
これは値百万ルーブルの質問ですよ。習氏がトップになってから誰もが知りたがっていることだね。当初人々は、習氏が素晴らしい改革者になることを期待していました。
でも私は、中国共産党の監督下で真の改革が可能だとは思えません。
党はソビエト連邦で起きたことを見て、それが中国で起こったらと肝を冷やしました。
事実、習氏は2013年のスピーチで、ソビエト連邦崩壊についてゴルバチョフを非難しました。「本物の男は一人もいなく、誰も抵抗もしなかった」
習近平は自身をゴルバチョフに見立て、党を崩壊させようとするのでしょうか?
恐らく共産党という巨大なマシンに潰されてしまうでしょう。
ディスコのミラーボールや綿菓子機のような無害なパーティーマシンではなく、悪のマシンであり、逆らえば殺されてしまうような悪魔の「綿菓子」製造機みたいのものです。
フォーブスの記事が的確に指摘したように「習氏はワンマン体制を固めているのではなく、一党独裁体制を固めているのです。ただ 党の頂点に自分が鎮座しているだけ」
これはしっかり認識すべき大事なポイントなんです。
ご質問感謝します。今回も番組を見てくださって ありがとうございます。