【動画ニュース】中国がロシアに急接近 専門家「真の同盟国にはなりえない」

米中貿易戦争が拡大する中、習近平国家主席がロシアを訪問し、「プーチン大統領は一番の友人であり、両国の関係を包括的な戦略的提携パートナーシップに高めることに同意した」と述べました。一方、評論家は中国とロシアの友好関係は表面的なものにすぎず、真の盟友にはなりえないと指摘しています。

習近平国家主席は6月5日、3日間の日程でロシアを公式訪問しました。今回の訪問は習主席にとって、米中貿易協議が物別れに終わってから初の外国訪問となりました。習主席とプーチン大統領はクレムリン宮殿で会談を行い、原子力エネルギー、天然ガス化学工場、自動車製造、工業団地の建設、5G提携などに関し合計200億ドル(約2兆1600億円)を超える商談に署名して、両国の関係を「中ロ新時代の包括的な戦略的提携パートナーシップ」に高めると発表しました。

米国在住の時事評論家、唐靖遠(とう・せいえん)氏は、習主席の今回のロシア訪問は、中国とロシアが協力体制を組むことを米国にアピールするためのもので、実質的な意義よりも象徴的な意義の方がはるかに大きいと語っています。

時事評論家 唐靖遠氏

主席の今回のロシア訪問は、金正恩朝鮮労働党委員長がトランプ大統領との会談で決裂した後にロシアを訪問したのと性質としては同じだ。いずれも米国からの強大な圧力を受けた後、ほかに手段がないためロシアにすり寄って、自身が孤立しておらず依然として米国からの圧力にあらがう力を持っていると示さざるを得ないだけだ」

新華社通信や中央テレビ等の官製メディアは7日、習国家主席が6日にサンクトペテルブルグ大学名誉博士の学位を授与されたと報じました。その前には清華大学がプーチン大統領に名誉博士の学位を授与しています。

時事評論家 鄭浩昌氏

「中国とロシアが今一つにまとまっているのは、両国とも西側社会からの封じ込めに遭っているからだ。習主席の今回の学位授与は国営メディアによって大きく報じられた。しかし以前に習主席が南アフリカの博士学位を授与されたとき、メディアは沈黙していた。つまり今回の学位授与が米国にアピールするためのものだということは明らかだ」

米国在住の時事評論家、鄭浩昌(てい・こうしょう)氏は、中国とロシアの関係は上着とその裏地の二層に分かれており、学位を贈りあい、両国の関係が「包括的な戦略提携関係」に高まったと称しているのは上着の部分で、見た目はよいが使い物になるかどうかは分からないと指摘しています。

時事評論家 鄭浩昌氏

「ロシア産汚染原油の中国への輸出、中国資本によるバイカル湖畔でのボトルウォーター工場建設に対するロシアの抗議、中国側がロシアとの武器取引の際にルーブルでの決済を渋っている。これらのことはまさに裏地の部分で、見た目はよくないが、実質的な問題を最もよく表している」

唐靖遠氏は、プーチン大統領は米中貿易戦争にロシアは無関係であり、ロシアは米国との全面的な関係改善を望んでいると早々と表明していたと指摘しています。プーチン大統領が今、中国に対し好意を示しているのは、主にノルマンディー上陸作戦75周年記念式典に招待されず西側諸国から冷遇されたことが一つと、もう一つは中国側がロシアに対し再度大口契約を持ち掛けてきたからだと分析しています。

時事評論家 唐靖遠氏

「ロシアはクリミア問題のために米国や西側諸国から制裁を受けており、ロシア経済はその後大きな改善がされていない。こうした状況にあるロシアにとって、中国からの経済援助は一定のニーズがある」

唐靖遠氏は、ロシアが中国と同盟を結んで米国に敵対するなどということはあり得ないし、中国共産党が崩壊寸前の今、進んで中国に代わって矢面(やおもて)に立つといったことはもっとあり得ないと指摘しています。

時事評論家 唐靖遠氏

「今回の中ロ会議は米国に対峙したときに、対抗手段を増やすために互いに手を取り合って困難を乗り越えようとしているに過ぎない。これは実益性の高い政治ショーであって、価値観と国家戦略上の利益が相通じることを基盤とする、真の意味での盟友関係を結んでいるわけではない」

1978年に難民として米国に渡ったロシア問題の専門家、レオン・アロン氏は米国の政治雑誌『フォーリン・アフェアーズ』の中で「中ロ同盟が結成されるという話は誇張だ。ユーラシア大陸における両国の利害は一致していない。両国は互いの勢力範囲内で互いの味方を懐柔し、顧客を奪い合い、双方の経済的、地政学的資産を奪い合っている」と記しています。

唐靖遠氏は、ロシアは中国共産党を全く信用していないと指摘しています。

時事評論家 唐靖遠氏

「先進技術を搭載した兵器を中国に売るのは構わないが、先進技術を渡すことはできないとロシアは考えている。そうでなければロシアが中国に輸出する多用途戦闘機Su-35のエンジンの一部部品を封印するわけがない。ロシアが中国政府を警戒するのは、中国政府を全く信用していないからだ」

唐靖遠氏は、中国の一帯一路が中央アジアの多くの国を債務の罠にはめ、中国政府の属国とするものである点もロシアを警戒させていると分析し、トランプ大統領とプーチン大統領の関係が改善されて経済制裁が緩和されたら、ロシアは直ちに中国共産党と距離を置くだろうと指摘しています。

 

 
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