「もはや途上国ではない」米国が中国に対する途上国優遇措置の撤廃を検討

米国政府はこのほど、不公平な輸出補助金に対する調査の条件を下げるため、中国を含めた一部の貿易相手国を、もはや「発展途上国」とは認定しないと発表しました。評論家は、発展途上国としての地位が失われたら、中共は自身のWTO規則違反について何の弁明もできなくなるだろうと語っています。

2月10日、米国通商代表部は、中国、香港、シンガポール、インドなど25の経済圏に対して行われているWTO「発展途上国」優遇措置を撤廃するため、米国の貿易救済法における一部の主な免除規定を改正中だと発表しました。

通商代表部は、1998年に定められた発展途上国経済圏リストはもはや現状に合致していないとして、リストを見直すことで、輸出補助金を獲得することで米国の産業にダメージを与えている国に効果的に照準を合わせて調査を実施できると発表しています。

通商代表部の今回の対応は、米国政府が20年にわたり発展途上国に対して行ってきた貿易政策を大幅に見直すことを意味しており、他の重要な輸出国に対し米国が下す処罰がより厳しいものになる可能性があるとの見方もあります。

米国はここ数年、WTOが加盟国を先進国と発展途上国の二つに分類してからかなりの年数が経過しているうえ、一部の加盟国に対し不公平な貿易優遇措置が取られており、経済的に豊かになった国がその後も「発展途上国」を自称すると、その他の経済圏がダメージを受ける可能性があると何度も表明しています。

米サウスカロライナ大学エイケン校の謝田教授
「米国はかなり前からWTOはあまり効果的な国際組織ではなく、国際貿易と各国の主権を効果的に保護できていないとみなしている。米国は実際に、WTOを拒む行動に出てもいる。私は、米国はおそらくすでに準備を完了しているだろうと考えている。もしWTOが改革を行えなかったら、もしくはその改革が米国を満足させられなかったら、米国はWTOを見限る可能性がある」

WTOの設立時に、各加盟国は自国が発展途上国と先進国のどちらに該当するのかを自己決定できたうえ、途上国は特別待遇を受けることができると規定されました。これにより、本来は禁止されるべき輸出補助金の提供が許可され、途上国が先進国に製品を輸出する際も税制優遇措置が取られることになっています。

トランプ大統領は、中国は世界第二位の経済大国であるにもかかわらず、WTOの発展途上国の肩書を利用して不公平な優位性を獲得していると何度も批判しています。

昨年7月、トランプ大統領はライトハイザー米国通商代表 に「WTOの改革が実質的な進歩を遂げられなかった場合、ワシントンは自国を発展途上国だと不適切に定義しているすべてのWTO加盟国のリストを公開する」と記された覚え書きを渡しました。

米国在住の時事評論家、田園(でんえん)博士は、途上国としての地位が失われたら、自身のWTO規則違反に対する言い訳をしている中共が、ますます色を失うだろうと考えています。

米国在住の時事評論家、田園博士
「中共は依然として国営企業に対しては各種違法な補助金を好き勝手に与え、外国企業に対してはやはり各種非関税障壁を設け、外国企業を国境の外側で阻んでいる。例えばインターネット企業やソーシャルメディアは、中国での事業展開が認められていない。この点でもすでに不公平な競争を構成しているうえ、多くの外国企業を公然と差別していることにもなる。国際的な貿易ルールに対するこうしたあからさまな違反は、実のところ中共が『発展途上国』と記された旗を振ることで保護されている」

ワシントンのシンクタンク「経済政策研究所」の2018年の報告には、中国のWTO加盟後、米国の対中貿易赤字が年々増加し、この間に300万あまりの雇用の機会が失われたうえ、中共は貿易の歪みや為替操作、労働者の権利の侵害といった手段によって、大量の廉価製品と中共の補助金を受けている製品を米国にあふれさせ、米国の製造業に深刻な打撃を与えていると記されています。

米国在住の時事評論家、田園博士
「米国は自国の国民によって自腹を切って、世界全体にこのような繁栄と平和がもたらされた状況を維持しているが、同時に彼らはむしろ、全世界のために経済的な輸血を行っている。特に中共経済の巨大化が進んでから、欧州や日本の実際の収益はどんどん縮小し、富の最大の流れが米国から中国大陸への一方通行の流れに変わってしまった。これは非常に深刻な問題を生み出している。米国が自らを犠牲にすることによって、世界の脅威を養っているとしたら、米国の国際的な義務に対する深刻な冒涜だ」

ワシントンのシンクタンク、ヘリテージ財団のアナリスト、ライリー・ウォルターズ氏はラジオ・フリー・アジアに対し、「米国はすでに第一弾を放った。ほかの国がこれに続けば中共に大きな影響を与えられる」と語っています。

米国サウスカロライナ大学エイケン校の謝田教授は「米国は国内法規を改正することで、中国に対し発展途上国が享受できる免除・優遇措置を二度と与えないようにしている。これは米中貿易戦争の第二段階交渉での核心的問題を俎上に載せるに等しい行為だ」と分析しています。

 
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