一帯一路のパートナー オランダでも対中関係見直しの動きか【疫病と中共】

人口わずか1700万人のオランダで、6月6日までに4万7335人の感染者が確認され、うち6011人が死亡して、同国は死亡率の最も高い国の一つとなりました。しかしオランダ政府は中共政府の責任を追及する声を強く上げてはいません。中共とオランダの関係性を振り返ってみます。

2019年にオランダ諜報機関は、中共がオランダのハイテク業界でスパイ活動を行っていると警告しました。

同年、米国の中国資本ハイテク企業XTAL(クリスタル)が、オランダの半導体メーカーASMLホールディングからIPアドレスを不正に入手し、数億ドルもの損失をもたらしたことが発覚しました。

ASMLは世界をリードする半導体メーカーで、中国はその重要な市場です。

同社を辞めた中国人の元従業員2人が、カリフォルニアに設立したのがXTAL社です。その親会社は北京の「東方晶源」で、一年後、XTAL社はASML社の顧客の誘導を開始しました。そこには韓国のサムスンも含まれていました。

オランダのフィナンシャル・デイリーは、中共当局が東方晶源に資金提供して、同社が中国のチップ市場での主導的地位を確立するのをサポートしたと報じました。

ASML社の事件によって、中国の技術の使用にはリスクがあると憂慮する声が挙がり、オランダ下院は直ちに政府に対し、ファーウェイが同国の5Gネットワーク事業に参与するのを禁止するよう呼びかけました。

駐オランダ米国大使は、ファーウェイのセキュリティリスクについてオランダに何度も警告していました。

しかし2019年4月にオランダ通信事業者のKPNはファーウェイとの提携を決定し、「ファーウェイをネットワークの重要でない部分に使用する」と発表しました。
このときから関連の議題がオランダ下院で今も検討されています。
2019年5月にオランダ政府は「中国戦略」を発表し、情報セキュリティ分野において中共に対しいわゆる「建設的かつ批判的な」立場をとると発表しましたが、ファーウェイが同国の5G事業に参入する立場にあることについては説明していません。

オランダのブロック外相はあいまいな態度を崩していません。

ステフ・ブロック・オランダ王国外務大臣
「この戦略では、どの企業のためにも公告を行わないことが適切だ」

オランダは、欧州最大の港、ロッテルダム港と欧州で三番目に大きなアムステルダム・スキポール空港を有しています。

オランダは17年前から一貫してEUで二番に大きな対中貿易相手国で、中共から「欧州のゲートウェイ」と呼ばれ、中共の一帯一路計画においても重要な国となっています。
2016年に一帯一路の一環として、中国の成都からオランダのティブルグを経由してロッテルダムに至る国際列車も正式に開通しました。このプロジェクトは中共とオランダ物流サービスGVTの提携によるもので、中国とオランダを結ぶ唯一かつ最速の鉄道輸送ラインです。

2016年5月、中国遠洋運輸集団の子会社、遠太平洋有限公司が、香港の実業家、李嘉誠(り・かせい)が掌握する和記港口集団(ハチソン・ポート・ホールディングス)と株式譲渡契約を締結し、1億4300万ドルでロッテルダムのユーロマックスコンテナ埠頭の株式の35%を買収しました。

中国遠洋運輸集団は欧州のコンテナ埠頭の主な投資者で、オランダ、ベルギー、スペイン、イタリア、ギリシャのコンテナ埠頭の株式を所有しており、一帯一路を理由に徐々に欧州に勢力を広めました。

オランダは貿易大国ですが、一帯一路によって貿易赤字を拡大させていることが明らかになりました。

オランダの中央統計局のデータによると、2016年から2018年にかけてオランダの対中国輸出額は108億ドルから138億ドルに増加した一方で、中国からの輸入総額は361億ドルから461億ドルに増加したため、貿易赤字が約27.6%増加しました。

あるオランダ輸送コンサルタントは、一帯一路は中共により大きな経済力と政治的権力を与えたと述べています。

輸送コンサルタントのオノ・リ・ヨン氏
「中国の規則と中国の法律を守らなければならない。最高の権力者は北京の裁判所だ。第二次世界大戦後の西側の自由貿易規則とは異なっている」
中共ウイルスの発生以来、オランダも中共との関係性の見直しを始めています。

4月28日、「オランダ貿易投資事務所」は名称を「オランダ在台事務所」に変更しました。

また4月15日には、オランダ国際関係研究所中国センターのウェブサイトに、中共は防疫面でより透明性を高めると同時にその医療支援の政治化を避け、虚偽の宣伝を停止し、さらに欧州の科学パートナーと貿易パートナーに対し市場を開放するよう要求する文書が掲載されました。

今回の疫病拡大中に、中共政権の脅威にどのように対処し、その本質を見抜くかについて、西側諸国の関心が高まっています。

 
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