水稲研究の権威・袁隆平氏を批判したネットユーザーを逮捕

権威の利用図りたい中共

中共当局から「ハイブリッド米の父」と呼ばれる袁隆平(えん・りゅうへい)氏が、先日亡くなりました。袁隆平氏は中共から特別扱いされており、中共当局は袁氏に対し批判的なコメントを投稿したネットユーザーを逮捕するまでに至っています。

中国の著名な水稲の研究者・袁隆平氏は、数十年に及んでハイブリッド米の研究に注力していました。袁氏は多臓器不全のため5月22日に亡くなりました。中共の官製メディアは袁氏を 「ハイブリッド米の父 」と称しています。

中国の一部のネットユーザーは、袁氏の死去についてコメントしています。

反体制派の八九季風氏は米放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)に次のように語っています。

「コメントしている人の多くは理性的な人たちで、袁隆平を個人的に標的にしているわけではない。ただ、当局が袁隆平を偶像化、神格化し、袁隆平がいなければ中国国民が飢え死にするかのような報道を人々が嫌っているだけだ」

中共は、北京を含む中国の5つの地域で、ソーシャルメディアに袁氏に対する批判的なコメントを投稿したネットユーザーを、少なくとも7人逮捕しています。

あるネットユーザーは、中国SNS・微信(ウィーチャット)で、「袁氏は米を遺伝子組み換えしたため、作物を奴隷にしてしまった」と投稿しました。この発言は、権威主義的な体制をほのめかしているようにも捉えられます。

中国のソーシャル・メディア・プラット フォーム微博(ウェイボー)にコメントしている一部のネットユーザーにも罰則が科せられています。

微博は5月24日に、数十のアカウントを永久凍結すると発表しました。

発表の中で、微博は袁氏の英雄的行為を歪曲、中傷、否定する人々に対して厳格な措置を取るとしています。

袁氏は長期にわたり、非党員でありながらも共産党政権を支えてきました。また、上級党組織のメンバーでした。

中共の官製メディアは、袁氏を国家的な「英雄」として宣伝しており、袁氏が米の生産量を増大することで世界中の何億人もの人々を救済したと主張しています。

中共の習近平総書記も袁氏を称賛しています。袁氏の死後、習氏は共産党員、高官、科学技術者に対し袁氏に学ぶよう呼びかけました。

中国問題アナリスト・趙培氏
「中共は袁隆平を世界の救世者と宣伝している。それは国民の関心をそらすためだ。まるで中国で大飢饉が起こったことがなく、それにより亡くなった人がいないかのように。また、中共が人を救ったかのようにも聞こえる。しかし、袁隆平が農業の研究を始めたのは、大飢饉がきっかけだ」

中国で起こった大飢饉は、毛沢東が中国を統治していた1959年に始まり、およそ3年間続きました。歴史専門家は、毛沢東の大躍進政策が失敗したことにより、このような惨事が引き起こされたと考えています。

数年前、袁氏はインタビューで大飢饉の時の出来事について述べています。

中国の水稲研究者・袁隆平氏
「大飢饉の3年間、湖南省では大変な苦労をした。本当に苦しかった。私は自身の目で5人の餓死者を見た。彼らは農地や道端、橋の下に倒れていた。何千万人もの人々が飢え死にした。少し良くなってきたと思ったら、1959年、1960年、1961年は「苦難の三年間」で、1962年に状況が良くなってきたが、それから数年も経たないうちに、1966年には文化大革命が起きて、また混乱に陥ってしまった。こんなに偉大な国が、こんなに古い文明の国が、めちゃくちゃになってしまった」

毛沢東が発動した「大躍進政策」によって、中国では1959年から1961年にかけて大飢饉が発生しました。3年間の大飢饉による死亡者数を中共はいまだ公表していません。

しかし、多くの歴史専門家の推定によると、死亡者数は2000万人から5500万人だとされています。

 
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