香港警察が蘋果日報本社を捜索 幹部5人を逮捕

6月17日、香港の地元新聞社は緊急事態に見舞われました。500人の警察官が本社の編集局を捜索しました。警察による捜索は今年で2回目となります。

香港警察は17日、500人以上の警官を派遣し、香港紙「蘋果日報(アップルデイリー)」の本社編集局に踏み込みました。

昨年6月30日に中共の全人代で可決され、香港政府が同日に施行した「国家安全維持法」に基づき、同社の幹部5人を逮捕しました。

香港当局は、幹部らを「外国あるいは国家安全保障を脅かす外部勢力との共謀」の疑いで逮捕したとしています。

国家安全維持法の最高刑は無期懲役となります。

蘋果日報の創業者・黎智英(ジミー・ライ)氏は、2019年に行われた民主化デモ活動に関わったとして、すでに実刑判決を受けています。

蘋果日報の本社が捜索されたのは、今年で2回目です。

国家安全維持法が施行されてからわずか1か月後の2020年8月、200人の警官が同社に踏み込みました。

米国の非営利団体「ジャーナリスト保護委員会(GPI)」のアジアプログラムコーディネーターであるスティーブン・バトラー(Steven Butler)氏は、声明の中で次のように述べています。「今日、民主主義を支持する蘋果日報の幹部5名が、国家安全法の下で逮捕されたことで、香港の希望である報道の自由が破壊された」

今回の家宅捜索は、警官らが現地時間の早朝7時頃に「捜索活動」の名目で、ジャーナリズム資料等を押収しました。

また、別の報道では、同社の幹部の自宅も家宅捜索されたと明らかにしています。

その後、国家安全保障担当者は、香港当局が蘋果日報に関連する企業3社の資産、1800万香港ドル(約2億5000万円)を凍結したと発表しました。

また、2019年に掲載された30本の連載記事についても、中共政権への国際的な制裁を促し、国家安全維持法に違反したとして、今回の逮捕に至ったとしています。

香港国家安全法は2020年6月30日に施行されました。これは事後法ではなく、法執行以前の行為に対しては処罰の対象とならないとしています。

そのため、なぜ今に至って蘋果日報の掲載記事について刑事責任を追及したのかは不明です。

蘋果日報への強硬措置は、国際社会に波紋を広げています。

英国のドミニク・ラーブ外務大臣は、今回の捜索は「中国政府が国家安全維持法の権限を行使し、公共の安全に取り組むのではなく、反対意見を標的にしていることを示している」と表明しています。

欧州連合(EU)のナビラ・マスラリ報道官は、今回の捜索について、「国安法がいかに香港メディアの報道の自由と表現の自由を抑圧するために使われているかを示している」との声明を発表しました。

台湾の呉釗燮(ごしょうしょう)・外交部長はツイッターで、「権威主義が香港の自由の象徴であるアップルデイリーに残忍な戦争を仕掛けている 」と懸念を示しました。

また、「この悲劇を目の当たりにして、怒りと悲しみを表現する言葉がありません」と付け加えました。

蘋果日報が国家安全維持法違反の罪で起訴されたほか、同紙を傘下に持つ「壱伝媒(​ネクスト・デジタル)」の張剣虹(ちょう・けんこう)最高経営責任者(CEO)と、羅偉光(ら・いこう)編集局長も同罪で起訴され、19日に初公判が行われました。

 
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