共同富裕?「毛沢東時代に逆戻り」

最近、中国共産党の習近平総書記が打ち出した方針により、貧富の格差是正を目指す「共同富裕(共同繁栄)」という名目から民間企業による自発的な寄付の動きが相次いでいます。しかし、評論家らはこれを「中共のお家芸」と指摘し、経済への影響を懸念する声が上がっています。

資金力のある中国企業は、中共からの圧力により、昨年をはるかに上回る金額を寄付しています。

習近平総書記は、8月17日に開催された中央財経委員会の会議で、「共同富裕」実現のための方針を打ち出しました。

それは、「3次分配」と呼ばれる高所得者や企業による社会への自発的な寄付や慈善活動を促す方針です。これにより富の配分を強化する狙いだとされています。

中共がこの方針を発表してから間もなく、収益性の高い多くの企業が自発的な寄付の動きを見せています。しかし、これらの企業は、善意からの行動ではなく、当局からの監視リスクを最小限に抑えるためだと考えられています。

政治評論家 胡平氏
「名目上は自発的な寄付になっているが、実際は当局が強制的に寄付させている。中国経済は、災害やパンデミックなどの影響で疲弊している」

貧困層への支援が急務だが、中共自身はそのお金を出したくない。だからこそ、民間企業に目を向けているのだ。

米通信社「ブルームバーグ」の報告によると、これまでに中国の億万長者7人が計50億ドル(約5490億円)という記録的な金額を寄付しています。これは昨年の中国全体における寄付総額の20%以上に達しています。

テクノロジー業界の多くも寄付を約束しており、サステナビリティ分野や農業分野の慈善団体への資金提供を計画しています。

政論誌「北京之春」 陳維健・編集長
「共同富裕のために最初に解決すべき問題は、高すぎる医療費と教育費だ。この二つが指標となる。『共同富裕』方針の下、民間企業は資金を奪われ、場合には消滅したりすると、奪われた資金は決して人民には届かず、権力を持つ一握りの資本家、『紅色家族(共産革命の功労者の親族)』に渡ることになる」

雑誌「北京の春」の編集長、陳維健(ちん・いけん)氏は、同方針について持続可能ではないと指摘しています。また、毛沢東時代に逆戻りし、国の経済が崩壊に直面する可能性もあると述べています。

一方、中共当局は同方針について、富裕層から資金を取り上げ、貧困層を助けるのものではなく、共に努力する共同作業だと表現しています。

政治評論家 胡平氏
「このようなことは何回もあった。あれこれ口実をつけて、民間企業に大きな損失を負わせる。それで企業のモチベーションを著しく低下させている」

評論家は、中国の民間企業が没落すれば、人々は仕事を失い、富裕層が貧困層に転じ、貧困層はさらに極度の貧困状態に置かれると考えています。

 
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