中国各地で相次ぎ停電 背景にあるものとは?

中国各地では現在、電力供給不足の深刻化により停電が相次いでおり、多くの工場が操業停止を余儀なくされています。時事評論家の唐靖遠氏がその理由を解説します。

中国各地では最近、多くの工場が生産を停止し、世界中のサプライヤーに衝撃を与えています。その理由は、電力使用制限です。

Dakota Micro社創業者兼CEO カリッサ・ルービー氏
「こんな話は聞いたことがありません。異常ですね」

カリッサ・ルービー氏は、カメラメーカー・ダコタマイクロ(Dakota Micro)社の創業者兼CEOです。同社は、中国での電力使用制限による打撃を受けた米国企業のひとつです。

しかし、最も深刻な影響を受けているのは中国国内の企業です。アルミニウム製錬所や繊維メーカーなどの生産工場は一時操業停止、または閉鎖を強いられています。街では信号機も停止しており、ロウソクの光で営業する店舗もあります。

現在、約3分の2の省で電力の使用制限が要求されています。

複数のセクターでの当局の規制強化が相次ぐなか、最近ではエネルギーを大量消費するセクターに対する締め付けが行われています。

昨年、中共政府は豪州からの石炭輸入を禁止しました。2019年では、中国が輸入する石炭全体のうち、豪州の石炭が約60%を占めていました。

中共当局は電力使用制限の原因を石炭価格の高騰だとしていますが、唐靖遠氏は本当の原因ではないと指摘しています。

時事評論家 唐靖遠氏
「石炭供給逼迫により、電力不足が生じていますが、これは引き金に過ぎません。本当の理由は、中共政府がその引き金を利用し、行政命令を出して意図的に過剰生産やローエンドと思われる産業を排除しているのです」

長期にわたり、中国は世界の工場とみなされてきました。グローバルサプライチェーンの生産拠点として位置付けられ、世界各国の製造業は中国に大きく依存していました。米国は、その最大の消費国です。

しかし、唐靖遠さんは、中共は現在、それ以上のことを望んでいると指摘します。

時事評論家 唐靖遠氏
「中国共産党は、ミドルレンジからハイエンドまでの製造業を充実させたいと考えています。それこそが、米国との長期的な戦略的競争において党の最大の資産になると考えているのです」

近年、中国ではデジタル経済の発展に向け、国家発展改革委員会の下、5Gネットワーク、人工知能、データセンターなど、次世代のインフラ整備を推進しています。

ビッグデータやデジタル監視システムなどの産業は、中共政府が国内で大量の個人データを収集するのに助力してきました。

唐靖遠さんは、電力供給不足が深刻化している一方、デジタルインフラの電力需要が高いため、中共政府はエネルギーを大量消費するローエンドな産業セクターや個人を犠牲にしていると考えています。

Dakota Micro社創業者兼CEO カリッサ・ルービー氏
「小規模企業や個人、さらには一般家庭までもが、犠牲になっているのです」

中共当局の公式報告では、次のよう述べています。

時事評論家 唐靖遠氏
「1トンの石炭をビッグデータ産業に投入すると、データセンターには1万元(約17万円)、デジタル経済には88万元(約1500万円)相当の価値を直接生み出すことができます。この付加価値は、デジタル産業チェーン全体をも牽引し、その額は約360万元(約6200万円)になります」

しかしここ数か月、パンデミックからの回復により、世界的に商品の需要が急増しています。

時事評論家 唐靖遠氏
「今回の電力使用制限は、中国の製造業の中心である浙江省、江蘇省、広東省で目立ちます。これらの省は製造業の中心地ですが、電力制限や停電が特に顕著です」

大規模な製造依頼の多くは中国に発注されます。その結果、中国では低価格・高エネルギー消費の製造企業が増加しました。製造企業は大量の電力を必要としています。

では、中共当局はなぜ電気料金の値上げをしないのでしょうか。唐靖遠さんは、その理由は電気料金が人々の生活に直結しているためだとしています。もし、大規模な影響を与えれば、社会的・政治的な面で、市民によるいわゆる「安定維持問題」を引き起こす可能性があります。

 
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