「南京大虐殺」の死亡者数に疑問を呈した上海の教員が解雇【禁聞】

上海震旦職業学院で教鞭を取る女性教員の宋庚一(そう・こういち)さんは12月14日、南京大虐殺の死亡者数に関する調査データが不足していると教室で話したところ、学生が密かに録画してインターネットに公開したことで大問題となり、大学側がただちに宋さんを解雇しました。評論家は、中国の高等教育機関の教師が現実を見据えた態度で歴史の真実を追求できるかどうかという問いに、この事件が答えをくれたと考えています。

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日本軍が当時南京で反人道的行為を行ったのは事実だ。なぜ彼らはこのような反人道的行為を行ったのか。これは特に研究を必要とすることだと私は考えている。だが、中国を侵略した日本軍は当時、南京でいったいどれだけの人を殺したのだろうか。30万人(という人数)にはデータによる裏付けがない。実際はそうなのだ」

12月14日、上海震旦職業学院のある女性教師が教室で、南京大虐殺の死亡者数30万人は「ある人物の記述の中に記されたおおよその数字」であり、そのほかにも「3000人」「2万人」「50万人」「7万人」などの推定データがあると指摘したうえで、中国の歴史家は共産中国成立後、そのなかの一人の話の30万人という数字を南京大虐殺のデータに採用したまま、それがずっと引き継がれているのだと話しました。この教師はさらに、一番ひどかったのは国民党で、当時は身分証番号があったものの、犠牲者の家族がまだ生きている時に死亡者の数を統計しなかったと指摘しています。

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「ドイツのユダヤ人大虐殺の場合は、死亡した全ユダヤ人の氏名が記載されていた。だから、この時代について史料の裏付けがなかったら、民間の話でしかないはずだ。だが我々は現在何も分からないのだ。なぜならその統計がないからだ。これは中国が昔から学術的に厳密でなかったということが反映されているのだろう」

この動画は学生がこっそり録画したもので、インターネットに公開されると大きく取りざたされ、しばらくの間小粉紅(若い世代の民族主義者)から攻撃されただけでなく、人民日報も紙面を割いて批判しました。

上海震旦職業学院は直ちにこの教師を解雇しました。学校のウェイボー公式アカウントは16日、東方電影学院で教鞭を取る宋庚一は、12月14日午後、「ニュース取材」授業中「謝った言論を発表」して教育上の重大な事故を招き、社会に深刻な影響を及ぼしたと発表しました。

北京首都師範大学教育科学学院の元副教授李元華氏
「南京大虐殺は中国を侵略した日本が中国人民に対して犯した罪であることは確かだが、彼女(教師)はこの話をしたとき、それよりもみんなが真摯な態度で歴史の真実を理解してほしいと思っていたのだろう。この件は実は、学術的に探究する範囲のことだ。この数字のことはさておいて、ひとりの教師として真実を追求する態度でもって歴史の真実を探ることはいけないのか。今回の事件からわかるように、中共はそれを許さない」

今年は「南京事件(中国では「南京大虐殺」と呼ぶ)」から84年となり、12月13日は中共政府が定めた「南京大虐殺犠牲者のための国家追悼日」でした。中国国内メディアが「一族の敵・国の恨み」を忘れるなと声高に宣伝する中、宋さんは教室で別の意見を提起しました。

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「もちろん私は、ずっと忘れずに恨むべきだとは思っておらず、この時代について改めて考えてみるべきだと思っている。戦争はどうやって起きたのか。これこそが一番重要なことだ」

撮影した学生はこの時に「戦争がどうやって起きたのか?はっ」と侮蔑を込めた笑い声をあげています。

米国在住の時事評論家、邢天行氏
「中共が恐れているのは真実が伝わることだけではない。彼らが本当に恐れているのは、中国人に思考力が備わることだ。これらの小粉紅たちのほとんどは、非常に若い人たちのはずだ。中共から教え込まれたことで頭がいっぱいになっている彼らは、正義心に満ちているのだろう。しかし、真実を語りたいと思っている人の口は閉じたいと彼らは思っている。ということは、彼らの言ういわゆる正義は、まったく正義ではない」

この動画には、盗撮した学生の声も録音されています。

動画(学生の声)
「あとで直接QQに投稿して、それからウェイボーにも投稿するつもりだ。お前が彼女(教師)を通報しろ。50万元はもらえるだろう」

中共は数年前から「学生情報員制度」を大々的に推進しており、各高等教育機関は、学生を学校の党政部門の手足として位置づけて教師の発言を監視させています。その代わりに、情報員となった学生は奨学金や学校からの高評価を得られるだけでなく、中共組織の中で昇進することもできます。

米国在住の時事評論家 邢天行氏
「現在ますます文革時代に似た状況に戻そうとしている。当局は表面的にはその形を取ってはいないが、群衆運動においてはその2.0バージョンともいえる文革がすでに露呈している」

近年、すでに多くの高等教育機関教員が、言論をやり玉に挙げられて処罰されたり解雇されたりしています。今年は宋庚一さんのほかに、青島大学機電工程学院の教員の高薇嘉(こう・びか)さんも、過去に何度も日本の靖国神社を訪れたことがあるとの敏感な発言を行ったことで職場を移動になり、教員資格を抹消されて行政過失記録に記載されています。

12月19日、中国のSNS上では、「教師が授業中に不当な言論を発したため、上海震旦職業学院は登録が抹消された」との情 報が広く伝わりました。企業情報サイトを確認したところ、やはり「抹消」となっています。翌日、中国の各メディアは、大学の親会社である上海震旦教育发展集团有限公司の職員の話として、「抹消したのではなく、名称を上海震旦職業学院有限公司に変更しただけだ」と伝えています。

 
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