五輪金メダリストと「鎖につながれた女」どちらが現代中国を反映?

江蘇省徐州市の「鎖につながれた女性事件」に対し、中共当局は事件の鎮静化を図っています。しかし、この事件によって、中共当局が関わっている他の犯罪行為も次々と掘り起こされる可能性があり、事件はこれからも注視され続けると思われます。

江蘇省政府は2月17日、合同調査チームを立ち上げて、豊県の「鎖につながれた女性」事件を徹底調査すると発表しました。しかし一方で、現地の事情を知る人物は、調査チームが最初にやったことは、当事者の女性結婚写真を漏らした人物の特定で、江蘇省と安徽省で100人以上が出頭を命じられたと明かしています。あるネットユーザーはこれを「問題を解決せずに、問題提起した人を先に『解決』する」という中共の一貫した手口だと強く非難しています。

以前に「鎖につながれた女性」を探すために、徐州市豊県を尋ねたことで当局から拘留された女性ボランティア「我能抱起120斤」さんは2月21日、新たに更新したブログの中で、拘留中に警察から、コンピューター用のカバンを頭に被せられて窒息させられそうになるなど、いくつもの虐待を受けたと明かしました。

またインターネットには、事件が明るみに出た徐州市豊県董集村の地元当局によって、村の回りが数百メートルもの鉄製フェンスで囲われた画像も投稿されました。

さらに、取材で董集村を訪れた中国メディア「湖南衛視」の記者は、感染対策を理由に村の外で止められました。

記者
「なぜ通してくれないのですか?」
関係者
「感染症対策だ」
記者
「私は健康コードを持っていますよ。PCR検査は?PCR検査でも駄目なんですか?」

世論をコントロールするため、以前に連署した大学卒業生はその後、次々と署名の撤回を求められており、以前に出版された、中国の人身売買に関する書籍も、オンライン購入サイトから突然削除されてしまいました。

時事評論家の唐靖遠氏
「当局は事件全体の鎮静化を最大限に図っており、この事件が今後も注視され続けるのを許さない。言い換えると、彼らはこの事件全体の解釈権を独占しようとしている」

事件の被害者である「鎖につながれた女性」の行方は現在明らかになっていません。この事件の情報を率先して明かしていたネットユーザーは、「鎖につながれた女性」は最初に入れられた豊県の精神病院から別の場所に移された可能性が高いと指摘しています。

また、中国の調査ジャーナリストの鄧飛(とうひ)さんは先日、徐州市民から寄せられた手紙をウェイボーに公開しました。そこには、董集村から約5キロのところに、「自宅に閉じ込められて外部から隔絶されている若い女性が、ほかにもいる」と書かれています。

2月20日夜、北京冬季オリンピックが閉幕し、何日も公に出ていなかった習近平総書記をはじめとする中央政治局常務委員7人が姿を現しましたが、国内の注意は「鎖につながれた女性」事件に集まっていました。人々は、谷愛凌選手と「鎖につながれた女性」のどちらが今の中国をよく表しているかを議論しています。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当研究員 王亞秋さん
「この2週間、実はほとんどの中国人が冬季五輪に注目していなかった。彼らの注意力は、江蘇省の僻地の村で起きた出来事に注がれていた」

上海地下鉄一号線の乗客
「今回は徐州の『8児の母親』が誘拐されて売られた。いつの日か私たちの身内や友人、私たちの家族が人身売買に遭う可能性がある」

時事評論家の唐靖遠氏
「鎖につながれた女性の事件が明るみに出たが、これは一種の長期的でシステム化され、産業チェーン化した運営が行われているのだ。このような政府が参与した犯罪行為にはこうした性質がある。だからこの事件に関連しているのは、中共体制全体に属している悪の一部であり、体制的な犯罪なのだ。だからこの事件が明るみに出たことによって、他のことも暴露される可能性があり、高いレベルまで波及する可能性がある」

あるウォッチャーは、民衆の「鎖につながれた女性」事件に対する注目度は下がらないだろうし、当局の抑圧が激しくなると、民間からの反発はさらに大きくなるだろうと考えています。

 
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