中共上層部内部闘争がコロナ対策にも影響か

中国各地で行われている厳格な都市封鎖によって強烈な影響を受け、中国の感染症対策はどのように変化したのでしょうか。一連の対策は、中共上層部の政治動向と内部闘争に大きく関係しているとの分析があります。

習近平総書記は5月5日に開催した中共政治局常務委員会の会議で、この件に対し「『ダイナミックゼロコロナ(動態清零)』の全体方針を揺るぎなく堅持する」との明確な回答を打ち出しました。

注目すべき点は、習近平総書記がこの会議で「我が国の防疫方針と政策を歪曲し、疑い、否定する一切の言動と断固として闘争する」必要があると強調したことです。時事評論家の袁斌(えんひん)氏は、こうした表現はこれまでも具体的な対象を想定したうえで使用されており、決して空砲を打ったわけではないと指摘しています。

とはいえ、中共当局の推進するゼロコロナ政策を誰が「歪曲、疑い、否定」しているのでしょうか。

ゼロコロナの「否定」について袁斌氏は、中国の中・下層のかなりの人々がゼロコロナ政策の被害者であり、彼らがゼロコロナに反対していると指摘しています。彼らの相当数は当初はゼロコロナに賛成していましたが、その後に自身の身にほこりが降りかかってくるのを目の当たりにして考えを改めました。

また、ゼロコロナに「疑いを」持っているのは防疫対策に詳しい専門家がほとんどで、中でも感染症の専門家が特に疑念を抱いています。例えば、中国の感染症対策専門家の鍾南山(しょう・なんざん)氏は4月中旬に発表した一文の中で、ダイナミックゼロコロナの長期的な維持は不可能であり、順番に開放していく必要があると述べて、これまでの主張を突然くつがえしました。

ゼロコロナを「歪曲」しているとされる人のほとんどは、中共体制内部の各級の官僚で、彼ら全体が何もしない、つまり「寝そべり」を行って習近平総書記を困らせています。

官製メディア「環球時報」の元編集長の胡錫進氏は5月5日、ウェイボーにゼロコロナ政策を批判する投稿をして、ゼロコロナは重要ではあるが、「コストが制御可能なゼロコロナこそに意義がある」と述べました。しかし、この投稿は即座に削除されました。

袁斌氏は、鐘南山にせよ胡錫進にせよ、従来の主張を突然くつがえしたのは、中共上層部の他の人の意思が働いた可能性が高いと考えています。あるときを境に、中共の李克強総理は感染症対策の面で、習近平総書記とは逆の方向を示すようになりました。

第20回全国代表大会を控えた今、中共上層部の政治闘争は、感染症対策にも表れています。

 
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