米国がユネスコ復帰 中共影響力への警戒

米国中国の様々な分野での対立が激化するなか、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は12日、米国が7月から同組織に復帰する計画を発表しました。これは米国が国際組織、特にAIの規範作りの分野で中国共産党(中共)の影響力拡大に対抗するための最新の動きと見られています。

米国はすでにユネスコに再加入の意向を伝えており、同組織の脱退を2017年に表明してから6年を経て、再び同組織へ復帰する見通しです。また8日に提出した書簡の中で、再加入に関する計画を示しました。

ユネスコの創設メンバーとして、米国はかねてより同組織の主な予算拠出国で、脱退前は経費の最大22%を提供していました。しかし、2011年からパレスチナの加盟受け入れをめぐって、ユネスコとの10年にわたる論争が始まりました。

3月、ブリンケン国務長官は議会で予算について話した際、「中国は今やユネスコへの、最大の単独寄付者であり、米国の不在は中国にAIのルールを設定する機会を与えた」と言及しました。そして、米国はユネスコに復帰し、AIに関する規範作りに携わるべきだとする考えを述べました。

米セント・トーマス大学国際研究セミナー教授・葉耀元氏
「実のところ、米国は世界最大の経済・軍事大国として、世界秩序の確立や維持の面で、米国自身が欠けることを避けたいのです。バイデン政権下では、こうした動きを通じて、新しい制度の確立や発展において、確実に米国が支配できる、あるいは少なくとも米国が世界の将来について、関与し理解することを期待しています」

カナダのヨーク大学教授・沈榮欽氏によると、ChatGPTが世界に広まってから、AIは情報分野だけでなく、環境保護、エネルギー、軍事・防衛などさまざまな分野で非常に速いスピードで発展しているものの、各国の政府が法整備の面でAIの発展スピードに追いついていないという課題が浮き彫りになっています。

カナダのヨーク大学教授・沈榮欽氏
「世界でAIに関する規制の枠組みがない中で、ユネスコがほとんどの国が準拠できる基準、普遍性のある基準を作成し提供できれば、その規範作りに参加する国は、より多くの発言権と影響力を持つことになります。これが米国がユネスコに復帰する最も根本的な目的だろうと考えます。」

2021年11月に採択されたユネスコの「人工知能の倫理に関する勧告」は、AIの倫理的利用に関する初の国際的規範であり、幅広い問題を網羅しています。

今回の米国のユネスコ再加入に対して、中共は嘲笑しているようです。 中国外交部の毛寧報道官は最近、「国際機関は地政学的なゲームの争いの場ではない」と発言し、さらに「米国は2度目の条約破りや脱退の行動を見直すことを優先すべき」だと語っています。

葉耀元氏
「米国が復帰するからと言って、それが中国に対する抑圧だというのは少し大げさだと思います。もちろん、過去には、米国は中国の国際組織への浸透に対して比較的寛容でしたが、現在の米中間の争いにより、必然的に米国は、国際組織への関与を増やし、中国と組織内での均衡を図りたいと思っているのでしょう」

沈氏は、米国がAI分野での中共との競争を激化させており、その中にはハイエンドAIチップの中国への輸出制限も含まれていると考えています。

沈榮欽氏
「米国と中国は今、AIをめぐる競争が非常に激化している段階なので、今回の行動は簡単に言えば、米国と中国の技術戦争の一環と言えるでしょう」

ユネスコのアズレ事務局長は、ある特別会合で米国のユネスコ復帰を発表し、ユネスコと多国間主義への信頼に基づく強い動きであると述べました。

米国の加盟は、来週、同組織の193の加盟国の投票により決定する予定です。

 
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