反スパイ法懸念 Mスタンレー技術者200人中国撤退

このほど、中国共産党(中共)が中国国内でのデータ管理を強化したことを受け、米投資会社モルガン・スタンレーが200人以上の技術専門家を中国から撤退させていることがわかりました。これは今月19日に、ある情報筋が明らかにしました。専門家によると、モルガン・スタンレーは中共が改正「反スパイ法」を乱用することを懸念し、技術者の安全のために中国から撤退させたということです。

この問題に詳しい匿名の情報筋がブルームバーグに明かしたところによると、撤退した技術スタッフは、中国にいるモルガン・スタンレーの技術スタッフ総数の3分の1以上を占めるといい、現在は香港やシンガポールなどに異動したとのことです。

情報筋によると、モルガン・スタンレーは、中共の規制に準拠した別のシステムを構築中であることがわかりました。この新しい設備は、数億ドル規模のコストがかかると予想されており、同社の元々のプラットフォームとは互換性がないということです。

台湾国防安全研究院の蘇紫雲氏
「これは主に、中共による関連規定の強化に対応したものであります。第一に、中共が公布した改正反スパイ法ですが、中共はいわゆるスパイの定義を広くし、曖昧にしてます。そのため、外国人アナリストが誤って中国でスパイのレッテルを貼られる可能性が十分にあります」

今月1日に正式に施行された改正「反スパイ法」ですが、スパイの定義が拡大されただけでなく、国家安全保障に関わるあらゆる文書やデータの送信も禁止されています。これを受け、米情報機関は、中国でビジネスを展開する外国企業が危険にさらされる可能性があると警告しています。

蘇紫雲氏
「第二に、本来、金融投資会社であるモルガン・スタンレーのようなコンサルタント会社は、多くのアナリストを抱えています。中国の様々な産業の市場や技術的側面に関する投資分析を行い、それを投資家に参考として提供したり、社内の株式市場運営の基礎としたりしています。このような業界分析や技術分析、研究者や開発者の背景情報を収集すると、一種の曖昧な『グレーゾーン』が存在し、スパイ行為とみなされる可能性があるのです。多くの外資企業は従業員を守るために、従業員を中国から撤退させています」

中共は2021年に「データ安全法」を成立させ、電子的に記録された情報、またはその他のいかなる形式の情報もデータの範囲内であると定めました。 また、改正反スパイ法では、データに関する規制をさらに強化しています。

蘇紫雲氏
「これら規則や規定はすべて、中国で活動する外国企業にとって窮屈なものとなります。このような状況下では、外国企業は細心の注意を払うほかありません。いつどこで、何がきっかけで中共の怒りに触れてしまうかわかりません。そしていざ、中共が本当に行動に移し、捜索したり、何人かを逮捕しようと思えば、それは非常に大きな問題になります。そのため、外資系企業は一部の中国に関係する事業のみを独立させ、中国に関するサービスだけを行う方が良いでしょう。そして、中国とは関係のない業務を中国国外に移すのです」

米国在住の時事評論家、藍述氏は、もし分離しないならば、これらの外資系企業は中国での分析データを海外に発信することはできないと話します。もし中共が特定の政策に違反したと判断した場合、何が起こるかわかりません。

3月以降、機密性の高い経済データを提供する外資系コンサルタントやコンサルティング会社が中共の標的になっています。中には、米国のベイン&カンパニー、ミンツグループ、キャップビジョン、デロイなどが含まれます。同時に、中国最大の経済・金融データベースであるウインド(万得信息技術)も禁止されています。

中共による相次ぐ外資系企業への締め付けの動きは、中国経済の回復の遅れと相まって、外資系企業の流出を加速させ、残った企業も市場のために譲歩を余儀なくされています。

現在、多くの多国籍企業が、今後、中国での事業の方向性を調整することを検討しています。ゴールドマン・サックスは中国国内での事業のために独自の新たなシステムの構築を検討していると報じられています。また、マイクロソフトは中国にいる自社のAI専門家の安全を確保するため、カナダへ異動させることをを決定しました。

 
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