中共の新たな科学技術組織が密かに設立

中国共産党(中共)は、地方政府、斡旋業者、ヘッドハンティング業者、さらには人脈を通じて、海外の科学研究者を中国に呼び戻すための新たな科学技術組織「中央科学技術委員会」を密かに設立し、今年7月に初会合を開きました。当局は、米国による科学技術輸出制裁や投資禁止を前に、今後の科学技術戦略について控えめな姿勢を維持するだろうとの指摘もあります。

中共が今年3月に発表した改革措置では、「指導の一元化」と「国家革新システムの構築と技術構造の改革を推進」するため、中央科学技術委員会は、国の科学技術発展の戦略立案と政策立案を引き継ぎ、これまでこの役目を果たしていた科学技術省は再編となります。

香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は9月4日、中共が密かに新たな科学技術組織「中央科学技術委員会」を設立し、今年7月に初会合を開いたと報じました。

台湾国防戦略資源研究所研究員補佐・鐘志東氏
「このいわゆる科学技術委員会のトップが誰なのか、実際には公にはされていません。中共の外交委員会のようなもので、党組織の下に置かれています。 党主導の政治、党主導の軍という考え方の下で、一般的に、その地位は現時点では実質的に最高であると思われます」

同紙はオブザーバーからのコメントを引用し、委員会をめぐる守秘義務は今後も続くとし、地政学的な緊張が高まり、米国との科学技術競争が激化するなか、当局は将来の科学技術戦略について沈黙を堅持すると予想しています。

台湾国防安全保障研究院助手・王綉雯氏
「北京の意図的な秘密主義は、実際、中央科学委員会の重要性を浮き彫りにしています。 私は、彼らがその高度な兵器を開発しているという事実を隠蔽しようとしているのだと思うのです」

中共は2015年に「メイド・イン・チャイナ2025」の計画を打ち出したのは、まさに戦略的イノベーションの世界的リーダーになることを目指しています。しかし、この動きは世界中に警鐘を鳴らし、現在も続く米中の技術戦争の間接的な原因となっています。

現在、中共は、米国、カナダ、英国から、中国での就労や学術研究のために、地方政府、代理店、ヘッドハンター、さらには個人的な人脈を含むリクルートシステムを仲介して、人材を勧誘・誘致するという目立たないアプローチに切り替えています。

鐘志東氏
「中共は今回、過去に欧米諸国が「2025年計画」や「千人計画」に大々的に言及した際に受けた対抗措置を思い出し、基本的に、いわゆる現地化、アカデミズム化、さらには非常に目立たないアプローチを使って人材を発掘し、欧米諸国全体の注目を回避して、重要なことを行うキーパーソンを発掘できることを期待しているのだと思います。今、この動きを明らかにしたのは、正当化させるためです。大きな政策を打ち出したものの、具体的な詳細や人物についてはできる限り隠蔽しようとしているのです」

台湾国防戦略資源研究所研究員補佐である鐘志東氏は、大きな報酬のもとには必ず勇者がいるものだが、しかし、彼らが愛国心や民族主義の態度を持っているかどうかは別の話だと指摘しています。

例えば、もともとカリフォルニア大学サンディエゴ校の細胞分子医学教授だった傅向東氏は、武漢大学との共同研究のために「辞任を余儀なくされ」、パーキンソン病やその他の変性疾患の研究を続けるために今年3月に西湖大学へやってきたといいます。

台湾の国家国防安全保障研究院の中共政治・軍事・作戦構想研究所の助手研究員である王綉雯氏は、北京が海外の優秀な人材を中国に呼び戻すためにさまざまな方法を用いていると指摘しています。このアプローチは高齢の専門家には効果的かもしれませんが、中年の人材にとっては必ずしも魅力的ではないと考えています。技術発展には自由に議論できる環境が必要ですが、中共はそれを提供することができないといいます。

 
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