住宅ローンによる差し押さえ 多くの庶民が窮地に

中国の経済が低迷し、不動産市場が弱まり、住宅ローンの滞納が増加しています。返済できない世帯が増え、家を強制的に差し押さえられ競売にかけられるケースも増えています。そのため、多くの人が家を失う苦境に立たされています。

広東省東莞市の住民、周佳琪さん
「私の家のローンの支払いを滞納してしまいました。今は差し押さえられています」

周さんは2019年に東莞市で家を購入しました。その価格は200万元(約4200万円)以上で、60万元(約1200万円)を頭金として支払いました。140万元(約3千万円)以上の金額をローンで借り、毎月の返済額は8000元(約17万円)以上でした。しかし昨年4月、周さんは職を失い、ローンの支払いができなくなりました。

周佳琪さん
「数日前、裁判所から通知があり、すぐに競売にかけられると言われました。売却基準額は、市価の7割程度の140万元(約3千万円)です。今の市況は悪いので、誰も買おうとはしません。もし誰かに直接競売で買われたらおしまいです。私の家も、頭金もなくなり、さらに銀行に数万借りている上に、以前返済した30万元(約630万円)も全部損してしまいます。損失は80万か90万に達するでしょう」

広東省恵州市で金融業に従事していた雷暁雨さんは、2022年末に失業し、130万元(約2800万円)の住宅ローンをこれ以上返済できなくなり、唯一の家も強制的に競売にかけられる状況に直面しています。

中国経済が低迷する中、周佳琪さんや雷暁雨さんのような困難に直面している家庭が増えています。

中国のネットユーザー「安陽小段看房」
「家が裁判所によって競売に出されたことについて、裁判所から637元(約1億3500万円)を受け取った時、私は完全に打ちのめされました」

中国ネットユーザー「安陽小段看房」によると、2020年7月に鄭州市で101万元(約2100万円)で家を購入しました。23万元(約500万円)の頭金を払い、78万元(約1600万円)をローンで借り入れ、月々4500元(約9万6千円)を返済していました。しかし昨年10月、返済資金が尽きてしまい、家が競売にかけられています。中国で家を購入した李さんも同じような経験をしています。

中国で家を購入した李さん
「ローン返済を停止し、家が差し押さえられました。当初は100万元(約2100万円)を支払い、30万元の頭金と70万元のローンで、月々4200元を返済していました。しかし昨年、特別な事情があり、返済を停止せざるを得なくなりました。その時、ローンがまだ68万元残っていました。つまり2年間で12万元を返済しても、元金はわずか2万元(約42万円)で、10万元(約210万円)が利息でした」

李氏は、自分の家が差し押さえられ、全ての銀行カードが凍結され、ウィーチャットの中のわずか0.8元(17円)まで凍結されたと話しました。

李さん
「裁判所から家が競売に出される通知を受けました。評価額は88万元(約1800万円)で、売却基準額はその70%の61万元(約1300万円)です。現在、家を買う人が非常に少ないです。もし一回目の競売で落札されなければ、二回目はもっと悲惨です」

家が強制的に差し押さえられ、競売にかけられることで、多くの人々が家を失い、家族にとって耐えがたい苦しみをもたらしています。

昨年12月、広州市の女性が自分の家が競売に出されたため、南沙大橋から飛び降りて自殺しようとしました。

大紀元のコラムニスト、王赫氏
「このようなケースは中国では珍しくありません。近年の中国経済は大きな落ち込みを見せ、多くの人々が嘆き悲しんでいます。仕事を失ったり、給料が大幅に減ったりして、住宅ローンの支払いが困難になり、結果として契約違反に追い込まれる人が増えています」

競売物件とは、契約違反や借金の返済が滞ったために裁判所によって強制的に競売にかけられる住宅や土地のことです。

中国指数研究院のデータによれば、2023年の中国における競売にかけられた不動産の総数は約79万6千件で、前年に比べて21万3千件増え、36.7%の増加となります。2024年1月、全国での競売物件は約10万400件に上り、前年同月比で48.2%増加しています。

王赫氏
「中国の競売市場は2017年に始まったばかりで、既に数兆ドル規模に達しています。この成長速度は非常に速いです。これは中国経済が急速に悪化しており、中流層が生活に大きな困難を抱え、深刻な打撃を受けて急速に沈んでいることを示しています」

河南省駐馬店市出身の30歳のシングルマザー、辛さんは、自分の不動産を担保にして子供向けエンターテインメント事業を立ち上げましたが、2020年の新型コロナウイルスの流行によって、都市封鎖が実施され、事業が止まり、結果として家を失いました。

この1年で、この家は2回売れ残りました。辛氏は「誰が買うんですか?同じ建物内に10軒以上の家が競売にかけられています」と話しています。

中国のネットユーザー、「曾先生が語る不動産」
「今、家が競売にかけられること自体が最も怖いわけではありません。競売に出されても売れ残ることが最も恐ろしい事態です。現在、毎月最低でも5万軒以上の不動産が競売に出されています。地域で競売物件が全体の半分以上を占めるようになったら、それは本当の災害です。それは、家庭資産が少なくとも半減することを意味しています。そして、最も大きな潜在的なリスクは、他の市場、または金融システム全体に波及するリスクです」

 
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