【シドニー】死体展示にドナー同意書と身分証明書なし 重大疑惑浮上

シドニーで開催された本物の人体標本展示会が物議を醸しています。

オーストラリアの医療機関、Australasian College of Physicians(RACP)の調査により、ニューサウスウェールズ州保健局が展示会の開催承認において自らのポリシーに違反していたことが明らかになりました。

「Real Bodies」展ではプラスティネーションした本物の人体20体と200点の人体パーツが展示されました。それらの人体が中国人犠牲者なのではという疑念が広まり、倫理問題として世間の激しい批判を受けました。プラスティネーションとは遺体にプラスティックなどの合成樹脂液を注入し保存を可能にする技術です。

最近の声明によると、24,500人の医師と研修医からなる医療機関RACPが、州政府と連邦政府に対しこの展覧会を廃止するよう申し出ました。なぜなら展示会の主催者は、展示されている死体が誰のものなのかを確認するためのドナー同意書や身分証明書を保持していなかったのです。

RACPはニューサウスウェールズ州保健局へ宛てた書面で、展示されている死体は身分証もドナー同意書もなく、保健省の基準に違反していると主張しました。

「国際機関から提供される人体や人体組織において『ドナー同意書とニューサウスウェールズ州解剖学法1997とそれに関連する規定は、解剖実験や解剖許可の概説を要求する』という規定を満たさなければならず、それは一般公開される人体ドナーの同意書も含むものとする」とFairfaxは、ニューサウスウェールズ州保健局の声明を報じています。

解剖学法1977によると、ニューサウスウェールズ州では、ドナーが死後自身の人体を解剖実験に提供する意思を示す同意書が必要です。

いかなる場合でも、人体組織を永久に保存する処置を受ける場合は、ドナーの同意と意思が確認できるニューサウスウェールズ州保険局の手続き書類が必要なのです。

解剖学法では、ドナー同意書の承諾には人体や人体組織を人体展示会のような一般公開に使用する可能性がある事を含むとも規定しています。

Imagine Exhibitions社の社長トム・ザラー(Tom Zaller)氏は以前ニューズ・コーポレーション(Newscorp)に、身元確認や人体展示に対する本人の同意を確認できる書類はないと語り、世間の批判を浴びました。

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「Real Bodies」展示会:2018年4月14日オーストラリア、シドニーで開催された人体標本展示会。開催会場前に、展示されている人体標本の提供元を懸念する抗議活動が行われた。(Melanie Sun/The Epoch Times)

多くの弁護士や専門家、人権団体がこれらの人体は中国の政治犯や良心の囚人のものではないかと主張しています。

臓器の強制摘出に反対する医師団のソフィア・ブリンスキィ医師は、「中国の非倫理的移植産業は、プラスティネーションするための人体パーツを提供しており、国際機関によって精査されなければならない」と語り、中国政府による生きている人間からの臓器の強制摘出について言及しています。

ブリンスキィ医師は「法輪功学習者が最も被害者になり得る」とニューズ・コーポレーションに語りました。

ザラー氏によると、展示されている人体は最近のものではなく、2000年から2004年の間に中国でプラスティネーションされたものであるとタイムアウト・シドニー(TimeOut Sydney)が報じています。この時期は、規制が導入され中国において加工された人体の輸出入がより困難になる前で、法輪功学習者の迫害がピークであった時期と重なります。

ザラー氏は、人体は中国大連のビジネスパートナーである隋鴻錦(Sui Hongjin)博士によって提供されたもので、非倫理的に強制摘出されているという疑惑を否定しました。隋博士は大連医科大学の解剖学部の学部長であり、鴻峰生物科技有限公司(Dalian Hoffen Bio-Technique Co. Ltd.)のゼネラルマネージャーでもあります。

RACPの指摘に対しニューサウスウェールズ州保健局は、解剖学法は「故人の遺体の解剖」にのみ適応されるもので展示会には適応されないと回答しました。

一方ザラー氏は、フェアファックス(Fairfax)に、展示会は関連政府と州当局によって承認されていると語りました。さらに彼は、ニューサウスウェールズ州保健局からは特に懸念点も聞いておらず、ドナー同意書が必要だとも聞いていなかったと言っています。

RACPの倫理委員会委員長であるイアン・H・ケリッジ(Ian Kerridge)教授は、ニューサウスウェールズ州保健局の対応に問題があるとしたうえで、展示会を取り巻く主問題は人体展示会が倫理的基準を満たしておらず、展示された人々に敬意を払っていないと指摘しています。

「細胞、組織、人体に関わる世界基準の法律、規制、政策があります。いずれにせよ、これは人体展示を取り巻く単純な法律問題ではなく、このような事をする倫理的問題であり、州も連邦政府も沈黙している事が問題なのです」とイアン氏。

展示会の倫理問題をとなえている、NSW Greensのデビッド・ショーブリッジ氏は、展示会が開催された直後の4月18日に倫理的懸念を表明し、展示会の閉鎖を呼びかけました。

「私たちは皆、人間の尊厳を信じ、生と死の両方において人々に尊厳と敬意をもって接するべきです。この展示会はその原則に大きく違反しています…事前に同意書で故人の意思を確認できていない人々に対し、大変な屈辱的扱いをしている」とショーブリッジ氏は言います。

似たような人体展示会がフランス、イスラエル、アメリカそして最近ではプラハで禁止されたとニューヨーク・タイムズが報じました。チェコ共和国は、故人またはその家族による同意書のない人体加工、展示を防ぐために、国内の法律を改正しました。

 
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