欧州は中国の国有企業が、欧州で二番目に大きな港であるハンブルグに手を伸ばすことを許しました。港は経済的利益が絡むだけでなく、重要な軍事戦略的意義も備えています。では、欧州は中共からの経済面における誘惑と不透明なロビー活動を受けながら、中共の影響から抜け出すことはできるのでしょうか。豪州の反中共モデルは欧州でも機能するのでしょうか。また、米国の反中共同盟の一員である欧州が左右に揺れ続けていることについて、米国はどのように考えているのでしょうか。報道をご覧ください。
米国とEUは、中共に対する牽制と均衡を目的として、10月31日に鉄鋼・アルミニウム貿易に関する共同声明を発表しました。この3日後の11月3日、欧州議会メンバーで組織される欧州議会の「EUの民主主義プロセスに対する外国の干渉(偽情報を含む)に関する特別委員会」代表団が初めて台湾を訪問し、反共産党活動に関する経験をシェアしました。代表団が帰国すると欧州議会は、直ちに次の反共行動をどのように進めるかについて協議しました。
各大手メディアの報道によると、欧州議会はおそらく豪州が反中共を成功させたケースに倣って反浸透法を制定する可能性があります。
一方で、欧州は9月に欧州で二番目に大きな港であるハンブルグ港に中共国有企業が関与するのを容認しました。港は経済的利益をもたらすだけでなく、重要な軍事戦略的意義も備えています。では、中共からの経済面における誘惑と不透明なロビー活動を受けながら、欧州は中共の影響から脱却できるのでしょうか。豪州の反中共モデルが欧州でも機能するのでしょうか。また、米国の反中共同盟の一員でもある欧州が揺れていることを、米国はどのように見ているのでしょうか。
シドニーモーニング・ヘラルド紙は10日、欧州議会は現在、豪州の「外国影響力透明法」のような、外国からの干渉に対抗するための法案を整備して、中共統一戦線部やその他の中共関連機関に対抗し、不透明な手段によるロビー活動や欧州の政治への中共の干渉を防ごうとしていると報じました。
大部分の視聴者は主に、中国と豪州の間で貿易戦争が起きたときから、両国の関係が徐々に悪化したと認識していますが、中共に対する豪州の警戒心は、実は2016年から芽生えていました。
「中国は他国の内政に干渉はしないことを外交の原則としている」と中共は一貫して述べていますが、2016年、中共政府の関連組織が豪州の二大政党である労働党と自由党に490万ドル(約5億6310万円)もの資金提供を行っていたことが明らかになりました。中でも最も物議を醸したのは、豪州労働党のサム・ダスティヤリ(Sam Dastyari)元上院議員が寄付金を受領し、「豪州中国和平統一促進会」の黄向墨(こう・こうぼく)名誉会長と接触後、南シナ海問題について労働党の政策と異なる発言をしたことでした。この件が中共に対する警戒心を強めるきっかけとなったと同時に、反中共を決心させた主な要因にもなりました。
他国からの浸透と干渉を防ぐため、2018年6月に豪州上院議会は二つの法案を成立させました。その一つが「スパイ・外国干渉法」とも呼ばれる「国家安全保障法修正案」で、もう一つが「外国影響力透明化法案」です。この法律は、豪州の政治、大学及びその他機関に対する中共の不透明な干渉を防止するためのものとみられています。
法案の中では、外国の代理人は豪州司法長官に対し、事実に基づき公の登録を行って、その他の国に奉仕するものであるか否かを報告する必要があり、虚偽の説明を行った場合は関係者が刑事告訴されるとあります。
例えば、豪州の企業システムに進入して商業秘密を盗んだ外国人は、最高15年の実刑判決を下される可能性があります。しかし、この法案は市民や他の機関による関連の活動の阻止を目的としたものではなく、透明性を高めて公共の利益に合致させることを主旨としています。報道によると、この法案は実際に大きな役割を果たしています。
この法案の成立後、豪州は中共の浸透工作に粘り強く抵抗してきました。例えば2018年には、ファーウェイと中興通訊(ZTE)が豪州の5G関連設備に関与することを禁止し、2020年4月にはウイルスの出どころを独立調査するよう呼びかけました。また、同年5月に中共が経済制裁的な貿易戦争を開始したとき、世界の主要な経済国の中で、もっとも中国に依存している国の一つであった豪州は、別の提携先を見つけることに尽力し、貿易戦争で勝利を収めました。
同じ年、他国による豪州連邦と地方政府の分断工作に報復し、特に中共の一帯一路計画に対抗するため、豪州外国関係法案を可決させました。
2021年5月、豪州連邦政府は中国資本企業の嵐橋集団(ランドブリッジグループ、Landbridge Group)が締結したダーウィン港の99年リース権契約を審査した結果、この契約が国家安全保障上の脅威となると発表し、モリソン政権はこのリース契約を破棄させるかどうかを検討しています。2021年には孔子学院の審査も始めました。法案の成立後、豪州は経済、政治、文化、法律、国家安全保障などの分野でいずれも中共を牽制していると言えます。
大紀元コラムニスト 王赫氏
「実力の面で言うと、豪州と中共は同じレベルにはいない。利害面から言うと、豪州の経済は中国にすでにある程度依存している。中共の影響力で言うと、豪州はすでに全面的に浸透されている。
だが、豪州が真っ先に目覚めることができたのは、中共の悪辣なたくらみを認識でき、狼とは二度とダンスを踊らないと思ったからだ。
豪州は自身の行動を通じて世界に「是が非でも中共に抗わなければならない。そしてそれは可能であり、勝利を得ることができるのだ」と示している。欧州議会は今、豪州の経験を吸収して、EUの反外国干渉法の成立を目指している」
しかし、豪州モデルは欧州でも通用するのでしょうか。ドイツ国営放送のドイチェ・ヴェレは10月、中共がドイツの港に手を伸ばし、中共国有企業の中国遠洋海運集団公司にハンブルグ港CTTコンテナふ頭の株式の35%を取得させたが、ドイツの政治家は関心を示さなかったと報じています。
ドイツのハンブルグ港は欧州で二番目に大きな港で、中遠集団が入札したふ頭はハンブルグ港で二番目に大きなふ頭です。中共メディアの環球時報は、このふ頭は中共の一帯一路の一部である中国-欧州間の貨物列車物流の終着駅の一つで、欧州における中共の「最優先の中継駅」だと報じています。
大紀元コラムニスト 王赫氏
「米国は世界の16の重要な海峡や航路を押さえている。米国の海軍は世界一で、中国共産党はこれに対抗することができない。そのため、中共は主に経済的観点から世界の港湾ネットワークをコントロールしようとしている。
中でも、欧州の港は中共の主なターゲットであり、すでにギリシャ、イスラエル、スペイン、イタリア、ベルギーといった国で港の運営権を獲得している。ドイツのハンブルグ港はその最新の事例にすぎない」
米国営放送のボイス・オブ・アメリカは、世界の貿易の8割は海運が担っており、港は海運における結節点だと報じています。現在、中共は一帯一路を通じて、少なくとも60か国以上で港に関係する投資や建設、復興支援、港のリースなどを行っており、2019年の時点ですでにその数は101か所に達していました。
反共陣営として米国は、中共の一帯一路イニシアティブに対抗するため、G7サミットの「より良い世界再建(Build Back Better World))」計画の一環として、バイデン政権は来年1月から世界の大型インフラプロジェクト5件から10件に投資を行うと報じられています。
王赫氏
「EUが対抗措置を強化するのは必然だ。しかし、EUは27の加盟国を抱えていて、コンセンサスのとれる意思決定モデルを採用している。中共は互いを仲たがいさせ、それぞれを撃破する政策を講じるのがうまい。こうすることで、EUが一致した政策を打ち出すのを難しくしている。中共政権の本質に対する認識において、各国がこの点をよく理解できれば、EU自身の脆弱な部分は自然と消滅するだろう」
欧州が上げた「豪州に倣え」の声に続いて、豪州の反中共モデルを学ぼうとする国は増えていくのかどうか、引き続き注視する必要があります。