米国務省傘下の「正義への報酬(RFJ)」プログラムは今月7日、中国人ハッカーの張宇容疑者の身元や所在に関する情報に対し、最大1千万ドルの懸賞金を支払うと発表しました。
米国は同日、中国共産党(中共)との関係が指摘されるハッカー集団が使用していた攻撃ツールを押収し、無力化したことも明らかにしました。米政府は、重要インフラを狙う中共関連のサイバー攻撃への取り締まりを強めています。
今月7日、FBIは、米国務省が張宇容疑者に対し、1千万ドル(約15億円)の懸賞金を設定したと発表したことを受け、関連情報を転載しました。米当局によると、張宇は上海市国家安全局の依頼を受け、コロナ研究を行っていた米大学や研究者のシステムに不正侵入し、情報を盗み出そうとしました。
国務省の「正義への報酬」プログラムは、張宇容疑者の身元や所在に関する情報に最大1千万ドルを支払うとしています。
台湾「国防安全研究院」の研究員 沈明室氏
「このハッカーは中国やロシアに潜伏し続けることになるかもしれません。しかし、旅行や商用であっても、米国と犯罪人引き渡し条約を結ぶ国に入れば、すぐに拘束される恐れがあります。一定の抑止効果があります」
国務省の発表によると、張宇容疑者は中国籍で、上海勢炎科技有限会社の取締役を務めています。2020年初めから、当時上海勢岩網絡有限会社の総経理だった徐沢偉とともに上海市国家安全局の依頼を受け、複数の米国の大学や第一線のウイルス学者のシステムに不正侵入し、新型コロナウイルスに関する機密研究資料を盗み出したとされます。
2021年には、張宇容疑者と徐沢偉がマイクロソフトの企業向けメールシステムの脆弱性を悪用して攻撃を仕掛け、世界各地の数千台のコンピューターが被害を受けました。米国の大学や法律事務所も標的に含まれていました。
徐沢偉は今年4月にイタリアで逮捕され、その後米国に身柄を引き渡されました。一方、張宇容疑者は現在も逃亡中です。
台湾「国防大学政治作戦学院」の元院長 余宗基氏
「これは現代版の市民参加型の対スパイ協力体制です。高額な報酬金によって米国内の一般市民に情報提供を促し、社会全体で対スパイネットワークを築くことで、中国からのハッカー攻撃の被害を最小限に抑えようとしています」
今月7日、FBIと米司法省はまた、中共との関係が指摘されるハッカー集団「フラックス・タイフーン」が使用していたネットワークスキャンやフィッシング用のツールを押収し、無力化したと発表しました。
余宗基氏
「FBIは長期間にわたりフラックス・タイフーンの攻撃手法を追跡してきました。今回は具体的な標的や攻撃手法を把握したとみられます。この集団は民間のルーターやネットワークに侵入し、そこを足掛かりに攻撃を仕掛けます。台湾海峡をめぐる緊張が高まっていることとも関係していると考えています」
FBIの調査によると、中共と関係があるとされるフラックス・タイフーンはこれまで、米国の電力会社、日本やポーランドの空港、台湾の大学、重要インフラ企業などを標的にサイバー攻撃を行ってきました。
沈明室氏
「台湾の大学を狙う主な目的は、最先端の半導体やAI、防衛産業に関する技術や情報を盗み出すことです。大学がTSMCなどの企業や、国家中山科学研究院と防衛技術の研究開発で協力していれば、最先端の半導体やAI、防衛産業に関する情報が狙われます。盗んだ個人情報を将来の統一戦線工作に利用したり、得た情報を自らの活動に使ったりすることもあり得ます」
今回押収されたツールは「マイクロスキャン」と「フィッシュハブ」と呼ばれ、ネットワーク上の脆弱性の探索やフィッシング攻撃、標的システムへの不正アクセスなどに使われていました。
沈明室氏
「こうした攻撃では遠隔アクセス用のツールを使って重要インフラのコンピューターやソフトウェアに侵入します。地政学的な衝突が起きた際には、他国の電力、物流、交通システムを遠隔操作で停止させたり破壊したりすることができます。米国、日本、台湾の軍事対応や社会機能を妨害し、電力を遮断すれば兵器システムの運用を妨げることもできます」
FBIは、これらのツールを中国の情報セキュリティ企業「誠信科技集団」が運用していたとしています。同社は中共当局と契約を結んでいます。
沈明室氏
「欧米諸国が近年、中国への半導体や先端技術の輸出規制を強化していることも、サイバー攻撃が増える背景の一つです。中共は通常のルートでは先端技術や半導体設計、重要なソフトウェアを入手しにくくなっています。そのため、サイバー攻撃が技術面で追い越すための近道になっています。こうしたハッカー業者には具体的な標的や任務が与えられ、西側諸国の産業機密や学術研究の情報を盗み出しています」
米政府は今後も、事件に関与した中国の情報セキュリティ企業がサイバー攻撃能力を再構築していないか、監視を続ける方針です。



