アングル:世界景気、中銀の政策転換で変調か

[ロンドン 23日 ロイター] – 景気の拡大に伴い、主要国中央銀行による金融引き締め観測が強まっている。過去には引き締めが始まると景気後退、あるいは前回のように金融危機が起こった例が多く、警戒感も生じている。

米連邦準備理事会(FRB)、英イングランド銀行(BOE)、カナダ銀行などの中銀は既に利上げを開始しており、欧州中央銀行(ECB)も量的緩和の終了に近付いている。

今のところ、中銀は急速な引き締めを避け、物価押し上げと成長持続のために、資金の窓口を大きく開いたままにしている。

「危険なのは、バブルをあおることになり、結局もっと悲惨な長期的事態を招いてしまうことだ」と語るのは、コメルツバンクのピーター・ディクソン氏だ。

米国経済は既に8年5カ月も景気拡大を続けており、多くの予想通りあと2年続くと過去150年超で最長の拡大となる。ほかにも数十カ国が10年移動平均を上回る成長率となっている。

HSBCのエコノミスト陣は最近のリポートで、過半数の国が長期トレンドを上回るペースで拡大した後には、金融リスクが高まる傾向があると指摘した。

「世界経済が同時に拡大したのは概して、景気循環の3つの段階に限られていた。景気後退後の最初の回復期、次の景気後退期の直前、そして、何らかの金融危機の前だ」としている。

昨年は株価も世界中で高値更新を繰り返したが、今年に入ってからは荒れ模様だ。

アライアンス・バーンスタインのエコノミスト陣は顧客向けリポートで「最近の市場の混乱は、来るべき事態に備えた試験としか思えない。中央銀行が資産価格を下支えしてくれることが、あてにできない世界が待ち受けているからだ」と警鐘を鳴らした。

FRBは今年3回の利上げが確実視されており、4回に増える可能性も出ている。BOEも、以前の予想より早く5月に追加利上げに動く見通しだ。ECBの利上げはまだ先だが、年内には資産買い入れを中止する見通し。

ECBは金融危機前の2008年に早まって利上げに踏み切り、数カ月後に利下げを余儀なくされたことがある。2011年にも軌道修正を迫られた。

しかしコメルツのディクソン氏は、現在は経済の不均衡その他の問題が数多く解消されており、当時とは違うと指摘。「現実問題として、今のような超拡張的な金融政策に乗ったまま、経済を永遠に回し続けることはできない。二日酔いが重症化するのを避けるため、パンチボールを片づける時だ」と話した。

(Jonathan Cable記者)

 
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