米国の研究成果が外国に利用されるのを防ぐため、米国防総省は全米30大学を対象に研究安全審査を実施し、国家安全保障上のリスクがあると判断された外国機関との研究協力80件以上を打ち切りました。
国防総省は今月19日、30大学を対象とした研究安全審査の結果を発表しました。外国機関との研究協力80件以上について、国家安全保障上の潜在的なリスクがあると判断し、協力関係を中止したといいます。
同省によると、30大学すべてが、審査で指摘された協力関係を見直し、必要な措置を講じました。ただ、協力を打ち切った外国機関の名称は明らかにしておらず、機密技術が実際に流出したかどうかにも言及していません。
台湾「国防安全研究院」の研究員 沈明室氏
「予防的な措置という側面もあります。今回、打ち切られた80件余りの中には、予防目的で終了したものもあります。つまり、相手がリストに載っていなくても、今後も米国連邦政府の研究資金を受け取れるよう、大学側が自主的に協力関係を断ち、中国の大学との関係を切ったことを示したということです」
審査の基準となったのは、米国が国家安全保障上のリスクがあるとみなした外国機関をまとめた「第1286条リスト」です。リストには130機関が掲載され、このうち88機関が中国にあります。
復旦大学や上海交通大学のほか、中国共産党(中共)の国防分野と密接な関係を持つ国防七校すべてが含まれています。孔子学院の改称後に設けられた関連組織も審査対象となっています。
沈明室氏
「審査対象は、従来の軍事・国防系大学から、一般の有力大学にまで広がっています。こうした大学も軍民融合を通じ、軍や中国の重要な科学技術プロジェクトを数多く請け負っており、こうした形で米国の技術を盗み取っています」
豪ニューサウスウェールズ大学で政治学博士 林松氏
「学術研究に携わる人々の間では、こうした問題はかなり以前から認識されていました。中共は名目上、他国との文化交流や相互支援、協力を掲げていますが、実際には多くの問題が起きています。米国やその他の西側諸国の大学との、いわゆる協力関係を利用して、研究者を金銭などで取り込んでいます」
国防総省は8月中旬、30大学に対し、国家安全保障上のリスクがある外国機関との特定の学術、資金、研究面での関係を審査するよう指示しました。
背景には、納税者の資金で支援された研究成果、とりわけ軍事関連技術が外国勢力に取得され、米国の安全保障を脅かすことへの懸念があります。
林松氏
「浸透工作のほかに、中共側の関係者が研究成果を盗むこともあります。米国や西側の大学が研究しているプロジェクトの中から、中共が有用だと判断したものを盗用し、中国に持ち帰って利用してしまいます」
沈明室氏
「これによって、中国の大学は、世界の一流学術界から孤立する状況に直面することになります。また、重要な先端技術分野で技術的な突破口を開くまでに、より時間がかかるでしょう」
今回の措置には、国防総省の第1286条リストに掲載された機関との関係解消に加え、予防措置としてリスト外の機関との協力も打ち切る対応が含まれています。
沈明室氏
「すべての学問分野や科学技術分野が閉ざされたわけではありません。ただ、機密性の高い分野や先端技術では、米中間の協力は事実上ほぼ停止しています。半導体、AI、量子コンピューティング、バイオテクノロジー、新質生産力、新素材など、『スモールヤード・ハイフェンス(限定された先端技術の厳重管理)』や軍民融合に関わる協力であれば、米中が協力できる余地はほとんど残っていません」
米下院の中国共産党に関する特別委員会のモーレナー委員長(共和党)は、米国民の税金を中共の軍事的野心を支えるために使うべきではなく、大学は納税者の資金で行われる研究を守るため、さらに対策を講じる必要があると述べました。
沈明室氏
「米国の主な目的は、知的財産の保護と、こうした不当な浸透工作を防ぐことです。中国は他国の知的財産を盗み取ってきました。科学技術分野か否か、機密情報か否かにかかわらず、さまざまな情報を集め、その中から利用価値のある情報を選別します。米国が政策を変更したのは、中共が海外人材招致計画や孔子学院を通じて浸透し、米国の技術を事実上無償で中国へ移転するのを防ぐためです」
ムーレナー氏は、ほかの連邦研究機関にも同様の制限措置を導入するよう求めています。さらに国防総省に対し、制限リストを拡大し、中国の大学や中共関連の国防研究機関、中共当局が資金を提供する人材招致計画を新たに対象へ加えるよう要請しました。




