金融庁、全銀行にマネロン対策関連のデータ報告を命令=関係筋

[東京 15日 ロイター] – 金融庁が、マネーロンダリング(資金洗浄)対策の実態把握のため、全ての銀行を対象に基礎的なデータや体制面の取り組み状況を報告するよう命令していたことがわかった。複数の関係筋が15日、明らかにした。

同庁は、12日付で銀行法に基づく報告徴求命令を出した。預金額、海外送金件数、非対面での取引規模、コルレス契約(銀行相互間の為替取引契約)に基づく取引の規模、非居住者による口座開設数などの定量データと採用しているシステムなど体制面の報告を求めた。定量データは、過去の推移を把握するため3年分の報告を求めている。

マネロン対策などの国際協力を推進する政府間会合、金融活動作業部会(FATF)の第4次対日相互審査を2019年に控え、金融庁は昨年12月、金融機関向けのガイドラインを策定。同庁は金融機関に対し、ガイドラインで求められている最低限の体制と自らの取り組みの格差を分析するよう求めている。

しかし、一部の地銀では、個人が生活資金用に開いていた口座に突然多額の現金が持ちこまれ、その全額が海外の法人に貸付名義で送金されたにもかかわらず、銀行側がマネロンの可能性に気づかない事例が発生。

金融庁は、取り組みが遅れている金融機関ほどマネロンの標的になりやすいと警戒感を強めている。

金融庁の佐々木清隆総括審議官は7日、トムソン・ロイターの「金融規制ジャパンサミット2018」で行った講演で、各社の取り組みが10年前と変わらず、コンプライアンス部門任せで、経営陣の主体的な関与がなく、非常に失望しているとの見解を示していた。

報告徴求命令の背景として、FATFの審査の前に、金融庁としても所管する金融機関の現状を把握しておく必要があるということも挙げられる。

各銀行は1カ月をめどに金融庁に報告を提出しなくてはならない。データがない場合は代替データを示す必要があり、代替データも示せなければその理由の説明を求められる。データに不備などがあれば、立ち入り検査や行政処分につながる可能性もある。

今回の対応について、金融庁の広報担当者はコメントできないとしている。

(布施太郎、和田崇彦 編集:田巻一彦)

 
関連記事