中国共産党の元国防部長・李尚福と魏鳳和が、今月7日に収賄罪などの罪で2年の執行猶予付き死刑判決を受けました。習近平政権下で軍高官に科された処分としては極めて重いものとなっています。今回の判決の背後に軍内部の根深い権力闘争があるとの見方が出ています。今年1月末に失脚した中央軍事委員会副主席の張又俠に対する今後の処分を見据えた布石であると同時に、習近平の続投に向けた政治的地ならしとの見方も出ています。
中共の官製メディアによると、中国軍事法院は5月7日、元中央軍事委員で元国務委員兼国防部長・李尚福と魏鳳和に対し、一審で2年の執行猶予付き死刑判決を言い渡しました。
魏鳳和は収賄罪、李尚福は収賄罪と贈賄罪に問われました。
両者の個人財産は全額没収されます。また、死刑の執行猶予期間満了後に無期懲役へ減刑された場合でも、終身服役とし、その後の減刑・仮釈放は認めません。
専門家の間では、「近年では異例の重刑」と捉えられています。
中国問題評論家 李林一氏
「今回の判決はかなり重いです。これ以上となれば即時死刑しかありません。中共内部では『内部闘争』『路線闘争』では死刑にしないという不文律があり、事実上の最高刑です」
また、公表された罪状は収賄・贈賄に限られる一方、量刑は過去の類似事件より重い点にも注目が集まっています。過去に失脚した郭伯雄、徐才厚、房峰輝らは、同様の罪で無期懲役にとどまっていました。
豪州在住の法学者 袁紅氷氏
「特に注目すべきなのは、2人が示していた政治的動向です。彼らの非公式な活動は軍内部にとどまらず、軍と党・政府機関の幹部らを結びつける役割を果たしていました。李尚福は鄧小平一族、魏鳳和は江沢民一族と深い関係がありました。これが重い判決の根本原因です」
李尚福と魏鳳和に対する判決が張又俠事件の「方向付け」となるとともに、習近平続投への布石を打っているとの見方もあります。今年1月には、張又俠と劉振立が汚職事件に関与し、捜査対象になりました。
時事評論家 鄭浩昌氏
「魏鳳和は収賄のみですが、李尚福には贈賄罪も追加されました。このクラスの人物が誰に賄賂を渡すのかを考えれば、今回の標的が張又俠であることは明白です。人事を担当していた苗華も関係している可能性があります」
法学者の袁紅氷氏によると、2人はいずれも習近平派でしたが、後に「政治的に不忠誠」と見なされました。その背景には台湾問題があるといいます。
袁紅氷氏
「習近平は台湾海峡での戦争を視野に入れていますが、魏鳳和と李尚福は、開戦すれば中共が敗北する可能性が高いと考えていました」
また、魏鳳和と李尚福はロケット軍や軍需企業の汚職事件にも関与していたとされています。
袁紅氷氏
「彼らは表向きには目立たない一方で、水面下では『非組織活動』を進めていました。台湾海峡での戦争が失敗した場合、彼らが後始末を担い、中国を掌握することを想定して、政治・経済両面で準備を進めていました」
さらに袁氏は、「現在の中共軍は、習近平自身の粛清によって指揮系統が弱体化している」と指摘しました。
袁紅氷氏
「習近平は終末的とも言える粛清を繰り返し、自らの軍内支配を維持しようとしています。同時に、台湾海峡での戦争という野望を推し進めようとしています。しかし結果として、中共軍の統帥機構を自ら崩壊させ、上将・中将クラスを壊滅状態に追い込みました」
近年、中国では軍高官の失脚や失踪が相次いでいます。2022年以降、少なくとも36人の将軍が粛清され、65人の軍幹部が消息不明になっているとされています。



