中国 天安門事件想起させる韓国映画「タクシー運転手」を封鎖

中国で話題となった韓国映画「タクシー運転手」に関する情報やコメントが、当局のネット検閲部により削除されました。中国のネットユーザーは、中国製映画「午夜のタクシー」を韓国の映画になぞらえて、話題にしています。

2014年に放映された中国の映画「午夜のタクシー」に関するコメントが、映画交流サイト「豆瓣(トウバン)」で急増しています。ですが、ネットユーザーが話題にしていたのは、この映画とよく似た題名の韓国映画「タクシー運転手」についてです。

「タクシー運転手」は1980年5月に韓国で発生した「光州事件」を背景として描いた映画です。ドイツ人記者を乗せて光州へ行った主人公のタクシー運転手が、軍隊が市民を武力で鎮圧している光景を目の当たりにして正義感が奮い立たされ、記者と共に軍の警戒線を突破し、真相を報道するという内容です。

同映画は先月韓国で観客動員数1250万人を突破し、中国でも大きな話題となりました。というのも、この映画で描かれている内容が、1989年の天安門事件を思い出させるものだったからです。その後、検索エンジンや映画情報サイト、さらにはニュースサイトや微博からも、この映画に関する記述がすべて削除されました。

映画交流サイト「豆瓣」も同映画に関する記述をすべて削除すると、不満に思ったネットユーザーが中国映画「午夜のタクシー」のタグを付けて、この韓国映画についてコメントしました。

ネットでは、「他の国ではこういう映画を撮れるのに、なぜ我々は話をすることさえもできないのか?」「星4つにしようと思ったけど、突然、タグが削除されたから、5つに変更」「彼らは同じ悪事を働いた。民衆が立ち上がって、真相を追及するのを恐れ、他国の歴史までも隠蔽した。他国の文明の輝きまでも吹き消して、自分は逃れたと思っている」「鋭い批判は絶対に許さず、穏健的な意見も受け入れず、ジョークにするのもダメとなれば、沈黙するしかない。だが沈黙さえもダメだと言って、賛美するよう強要する。挙句に、賛美が盛り上がらない者を捕まえた」などのコメントが上がりました。

アメリカ在住の学者、呉祚来(ゴソライ)氏は、ネットユーザーの行動をこのように分析しています。

アメリカ在住の学者 呉祚来氏:「いわゆる『東が上手くいかなくても西がある』です。民衆は自分の気持ちを表明し伝える空間を欲しています。ネット規制を突破できない状況にある人々は、この映画の題名をもじって新しいタグテーマを創造し、語るしかありません。みんな、このテーマが何を意味するか、分かっています。」

ネットユーザーの蕭(ショウ)さんは、中国のネットユーザーは映画「タクシー運転手」について、天安門事件と中国の現状を連想すると述べています。

中国のネットユーザー 蕭さん:「1989年の天安門事件と光州事件は全く同じものです。現在の中国の状況は、言論統制、自白の強要、捏造による迫害など変わらず、これらはすべて私自身が体験したものです。ネットユーザーの多くがこうした出来事を耳にしているはずで、だからこのことを話題にしているのです。これは一種の形を変えた抗議と言えます。」

共産党大会を間近に控えた中国では現在、多くのバラエティ番組のほか、馮小剛(フォン・シャオガン)監督の新作映画「芳華」も放映を中止されました。ですが、呉氏は、映画「タクシー運転手」の封鎖に党大会は関係ないと考えます。

アメリカ在住の学者 呉祚来氏:「この映画が話題になった後、よくないと思ったので削除したのです。とくに天安門事件については、少しでも話題になると削除するので、党大会とは関係がありません。」

中国のネットユーザー 蕭さん:「韓国映画に限らず、中国映画の思想的なものも思想的でないものも、全部削除され封鎖されます。」

呉氏は、「中国政府がいかに言論統制の堤防を高く築こうと努力しても、ネットユーザーは、あらゆる手法を尽くして、真相の解明を求め、自由の風が隙間から吹き込み、民衆を覚醒するのだ」と考えています。

新唐人テレビがお伝えしました。

 
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