プラットフォームの透明性を高め、ユーザーがアカウントの信頼性を判断しやすくするため、SNS「X」(旧Twitter)はこのほど、アカウントのIP所在地を表示する新たな機能を導入しました。この機能により、一部の中国共産党(中共)高官や「大プロパガンダ」アカウントがVPNを経由して国内の検閲を回避していたことが明らかになりました。また、「海外在住」と称する多数のアカウントの実際のIPが、中国国内を示していることも分かりました。
イーロン・マスク氏は最近、Xで新たな機能を公開しました。ユーザーは「このアカウントについて(About this account)」ページから、そのアカウントの作成・利用情報を確認できるようになっています。具体的には、登録日や所在地、ユーザー名の変更履歴、アプリのダウンロード経路などが含まれます。
Xのプロダクト責任者ニキータ・ビール氏は、この新機能によって公共における議論の透明性が高まり、実在のユーザーと「水軍(ネット上の世論操作部隊)」を識別しやすくなると説明しています。また、今後さらなる透明化を進めるための基盤にもなり得るとしています。
新たな機能が導入されると、多くのネットユーザーが中共のプロパガンダ・アカウントの実態を検証し始めました。
例えば、中共外交部の報道官・毛寧のアカウントは「所在地」が米国と表示されていますが、「接続経路」は中国のAndroidアプリ経由となっており、VPNマークが付いています。つまり、VPNを使って「壁越し」にログインしていることを意味します。
また、『環球時報』元編集長の胡錫進のアカウントは、所在地がフランスと表示されており、フランスのApp Store経由で使用していることが分かりました。
Xは中国国内では全面的にブロックされており、一般市民は通常アクセスできません。
オーストラリアのジャーナリストで政治学博士の林松氏は、こうした状況を「中共の二重基準」だと批判します。自国民のネットアカウント活動は厳しく制限しながら、西側のSNSを利用して対外プロパガンダを繰り広げていると指摘しています。
オーストラリアのジャーナリスト 林松氏
「西側の自由を利用してインターネット上で政治宣伝や浸透工作を行うのは、中共にとって格好の抜け道です。西側諸国は早期に対応策を講じるべきです。Xの今回の試みは非常に良いスタートであり、他のプラットフォームにも拡大されることを期待します」
公式アカウントだけでなく、ネットユーザーらは、中共の立場を擁護する「海外華人」や「日本人ユーザー」を名乗る多数のアカウントのIPが、実際は中国や香港にあることも発見しました。
最近では、中共が高市早苗首相の発言に対して世論攻勢を仕掛けた直後、X上に大量の「日本人ユーザー」を称するアカウントが登場し、「沖縄独立を支持」などと反日的な投稿を繰り返しました。しかし、それらのアカウントを確認すると、IPの多くが中国国内を示していました。
台湾のネットユーザーの中には、IP表示機能の導入後、こうしたアカウントや投稿が急減したと指摘する声もあり、「中共のネット工作部隊が撤退したのではないか」との見方も浮上しています。
台湾の「サイバーセキュリティ・戦略シミュレーション研究所」の副研究員、謝沛学博士は、「『本拠地の偽装』は中共のプロパガンダ戦における主要な戦略の一つだ」と指摘しています。
台湾の「サイバーセキュリティ・戦略シミュレーション研究所」の副研究員 謝沛学博士
「例えば、あるアカウントが『テキサス州出身の愛国者』や『台北在住の怒れる市民』に扮装する場合があります。しかし、今ではこれらのアカウントのIPが北京や江蘇など中国各地だということが明確に分かります。こうした『設定』と実際の発信元の矛盾が、一気にその発言の信頼性を崩壊させるのです」
また、一部のネット上の事情通は、「所在地が中国でありながらVPNマークがないアカウント」は、政府の承認を受けている機関か、刑務所の受刑者が減刑目的で「ネット世論任務」を遂行している可能性があると指摘しています。
謝沛学博士
「VPNを使わずに外国のSNSに直接アクセスできるのは、ごく一部の政府認可機関や担当者に限られます。こうしたアカウントの背後には、中国の公的機関、たとえば刑務所で服役中の囚人が減刑のために『水軍』として政府寄りの投稿を行うケースも考えられます」ただし謝博士は、今回のIP表示機能が逆に中共側に悪用され、反体制派の追跡や弾圧に利用されるリスクもあると警告しています。
謝沛学博士
「国家安全当局は、公開されたIP情報をVPNサーバーの接続記録と照合することで、国内の反体制派を特定しやすくなります。匿名性が失われることで、かえって保護を必要とする反体制派が発言を控えるようになるおそれもあります」
現在、Xは言論の自由が抑制されている地域のユーザー向けに「所在地のみ表示」というプライバシー設定を追加しています。この設定を有効にすると、プロフィールページにその旨が明示され、透明性と安全性のバランスを保つ仕組みになっています。




