制度の呪い? 中共軍事委員会副主席8人の悲惨な結末

先月、中国共産党(中共)中央軍事委員会副主席の張又俠が失脚したことが公表され、現在中共の軍権中枢が動揺しています。注目されているのは、この「中央軍事委員会副主席」というポストが、表面上は地位も権力も高いように見える一方で、実際には中共体制内で「ハイリスクなポスト」の一つとされている点です。中共が政権を奪取して以来、この地位に就いた多くの軍人が粛清や取り締まりの対象となり、失脚して名誉失墜、あるいは非業の死を遂げています。

中央規律検査委員会の元書記・尉健行の元秘書である王友群氏は、最近の記事でこれまでの中共中央軍事委員会副主席8人の命運を整理しました。

彭徳懐と賀竜はいずれも建国当初、元帥級に位置づけられた指導者でしたが、党内の政治路線をめぐる対立の中で毛沢東によって失脚させられました。彭徳懐は、「大躍進」政策を批判したことで「反党集団」の首謀者と見なされ、文化大革命期に拷問を受け、冤罪のまま亡くなりました。賀竜は、毛沢東にとって潜在的脅威と疑われ、中央文化革命小組により「二月逆流(文革に逆らう動き)」と非難され、軟禁状態に置かれました。重病を患っていた賀竜は拘禁中に高濃度のブドウ糖を強制的に投与されて死亡し、死後も名誉回復は行われませんでした。

最も象徴的な事例は林彪です。毛沢東の後継者に指名された林彪は、権力闘争の中で急速に失勢し、最終的に慌ただしく逃亡中に飛行機事故で死亡しました。事件は、いまだ多くの謎を残しており、中共の軍権をめぐる権力闘争史上もっとも衝撃的な一幕とされています。

六四天安門事件の当時、中央軍事委員会の第一副主席だった趙紫陽は、学生への武力弾圧に反対したことで鄧小平ら長老と対立しました。その結果、即刻解任され、16年間にわたり軟禁状態に置かれ、そのまま病死しました。

江沢民の影響力の下で昇進した郭伯雄と徐才厚は、10年にわたり中央軍事委員会を掌握し、江沢民の退任後も江沢民派の代理人として影響力を持ち続けました。2人は広範囲に官職を売買し、収賄を行い、軍事委員会を権力と金銭の取引場所に変えました。最終的に、習近平による反腐敗運動で失脚しました。徐才厚は公判中に病死し、郭伯雄は無期懲役を言い渡されました。

習近平によって異例の出世スピードで軍事委員会副主席に抜擢された何衛東は、「軍内部における習の最側近」と呼ばれていましたが、深刻な汚職と「忠誠心の欠如」により失脚しました。さらに、自殺したとの情報も伝えられています。

そして最近、中共軍内部で最も衝撃を与えたのが張又俠の失脚です。張は、中共軍の中でも数少ない実戦経験を持つ高官であり、習近平とは数十年来の旧知でした。第20回党大会で、習が「3期目の続投」を果たす際にもサポートしていたとされています。しかし、引退を目前にしていた張又俠が、突如として立件され、調査対象となりました。失脚した理由は不透明なままです。

米国在住の政治評論家・陳破空氏は、中共の軍権の乱れを「一党独裁と人治体制の産物で、軍の権限は市民から正当性を与えられたものではなく、軍は国家の軍ではなく政権維持のための党の私兵である。最高指導者はそれをさらに私兵化しようとしている」と指摘しています。

米国在住の政治評論家 陳破空氏
「毛沢東も習近平も同じ発想でした。そのため、必然的に側近らと意見の対立が生まれます。平たく言えば、路線闘争や思想闘争、厳格に言えば権力闘争です。毛沢東は、軍を巻き込み、林彪を利用して文化大革命の内戦に加担させました。鄧小平の時代には軍を動員して市民を弾圧しました。目的は国防でも対外戦争でもなく、政権防衛だったのです。習近平の時代になると、『党が銃を指揮する』と唱えながら、実際は『銃が党を指揮する』状態となり、軍権を武器に他の指導層を制圧するような構図が生まれました。これこそが制度そのものの姿なのです」

また陳氏は、中共の最高指導者は軍に依存して体制の安定を保ちながらも、同時に軍権の逸脱を恐れて厳重な監視を行っていると分析します。このため、権力構造は極度に緊張し、その中枢に近づくほど危険が増大すると指摘しました。これこそが中央軍委副主席が「ハイリスクポスト」とされるゆえんです。

陳破空氏
「君主に仕えるのは虎に従うようなものです。互いに信頼しません。君主が臣下を殺すか、臣下が君主を覆すかのどちらかです。彼らは恩恵を受ける存在であると同時に犠牲者でもあります。時には最高指導者自身が制度の犠牲となり、体制の墓碑と共に埋葬されることさえあるのです。このような軍隊は腐敗しており、安全感もありません」

豪州在住の法学者 袁紅氷氏
「軍は党に属し、その党はスターリンから毛沢東、そして習近平へと続く「共産皇帝」たちの所有物です。このように、中共の党首は自分に対する絶対的な忠誠を得て初めて安心しますが、それは現実には実現不可能な要求です。したがって、共産皇帝に脅威を与える可能性のあるあらゆる軍の地位、つまり軍事委員会の委員クラスからすでに、習近平による粛清の潜在的対象になっています」

悲惨な運命をたどった軍事委員会副主席8人は、血塗られた政治のタイムラインを浮かび上がらせると同時に、中共の体制が抱える軍権への深い不安をも映し出しています。

袁紅氷氏は、「中共体制そのものがミンチ機のようなものだ。粛清が頻発するほど体制が不安定になり、最終的にはこの全体主義構造そのものの崩壊を早めることになるだろう」と指摘しています。

 
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