中国共産党(中共)外務省はこのほど、米シアトルに到着した中国人研究者およそ20人が、米税関・国境警備局の事情聴取を受けたうえで入国を拒否されたと確認しました。ただ、中共は米側が入国を拒否した理由や事情聴取内容については説明せず、訪米に関する注意喚起を出すにとどめました。こうした詳細を公表しても米側への反論にはならず、かえって中国人研究者が米国でどのような点を重点的に審査されているのかを明らかにしかねないとの見方が出ています。しかも、米税関当局が中国本土の研究者や中国人留学生の入国を拒否したのは今回が初めてではありません。
米中関係をめぐる競争が解消されないなか、中共外務省は4月16日午後に声明を発表し、最近、米国が入国する中国人に対して「意図的に厳しい対応を取っている」と主張しました。さらに、直近ではおよそ20人の研究者が入国を拒否されたとして、訪米に関する注意喚起を出しました。
中共外交部は、「中国人研究者に対する『悪意ある聴取や嫌がらせ』が相次いでいる」と主張し、外務省および在米中共大使館・総領事館は、近く渡米を予定している人々に対し、「安全への意識を高め」、同空港からの入国を避けるとともに、事前に米国の入国規定を詳しく確認し、十分な準備を行うよう呼びかけました。
ただ、中共外交部は、米側が入国を拒否した理由や聴取内容については説明せず、「不当な聴取」と「安全上の注意喚起」に重点を置きました。
シドニー工科大学准教授 馮崇義氏
「党員であること自体が理由ではないと思います。もし入国を拒否されたのであれば、別の要因があるはずで、米側が何らかの不審な点を見つけたのでしょう。ただ、仮にそれが理由だとしても、中共側はそれを公にはしないでしょう」
分析では、この20人の研究者に対する聴取内容は、個人のプライバシーや機微に触れる研究分野に関わる可能性があるとみられています。こうした詳細を公表しても米側への反論にはならず、かえって中国人研究者が米国でどのような点を厳しく審査されているのかが浮き彫りになりかねません。
研究経歴や軍民融合プロジェクトへの関与、電子機器内のデータなど、米側がどのような聴取を行ったのかを詳しく明らかにすれば、米側の安全保障上の懸念が妥当だったのかどうかに関心が移る可能性があります。
台湾国防安全研究院副研究員 謝沛学氏
「米国の税関がこれらの研究者の入国を拒否する理由は、通常、ビザ申請における虚偽に関わるものです。たとえば、党員であることや軍との関係といった経歴を隠していた可能性や、あるいは先端技術を窃取するリスクがあると判断された可能性があります。中共がこうした詳細を公表すれば、それは結果的に、国内外に対して、これら研究者の経歴や属性が確かに敏感であり、安全保障上の懸念があることを裏付ける形になってしまいます」
また謝氏は、中共当局が意図的に被害者のイメージを演出し、具体的な理由をあいまいにすることで、米側の法執行に対抗する姿勢を維持しようとしているとの見方を示しました。
謝沛学氏
「中共側は、こうした事案を一律に、米側による根拠のない嫌がらせやイデオロギー上の偏見、あるいは政治的弾圧だと位置づけるでしょう。そうすることで、個別事案の細かな法的問題を争いたいのではなく、国際世論の場で大義名分を得ようとしています。聴取の内容は往々にして中共の重点研究分野や組織構造に関わるため、それを公表しなければ、米側がどこまで手の内を把握しているのかを外部に推測されるのを避けることができます。また、国内の関連分野で、聴取内容を知ったことによって動揺や不安が広がるのを防ぐ効果もあります」
CBPは通常、「国家安全保障」や「虚偽申請」に関する移民国籍法の条項を根拠に入国を拒否しています。一方、中共側は意図的に具体的な詳細をぼかし、対立の構図を強調したうえで、これを「悪意ある嫌がらせ」と位置づけることで、米側に外交的圧力をかけるとともに、国際世論の中で米国が「学術交流を破壊している」との否定的なイメージを作り出そうとしています。
謝沛学氏
「これら研究者の氏名が公表されれば、国際世論からさらなる圧力を受けたり、他国でより広範な制限対象リストに載せられたりする可能性があります。また、今後ほかの国で学術活動を行ううえでも影響が出かねません。加えて、国内で反米感情をあおり、とりわけ知識人に対して、米国は中国に敵対的で友好的ではないと感じさせることで、国家が進める人材の国内定着や研究の自立を重視する政策転換に協力させようとしています」
2020年5月、米政府は、中共軍と関係がある中国人留学生および研究者について、FビザとJビザでの米国入国を禁止する大統領令を公表しました。ただし、学部生は対象に含まれていません。この大統領令によって、税関職員には中国人大学院生やポストドクターの入国を拒否する権限が与えられました。
米国務省によると、税関当局はこの大統領令を根拠に、2021年には中国人留学生1964人、2022年には中国人研究者1764人について、ビザ発給を拒否しました。




