プーチン氏 訪中へ 中ロ条約更新で領土譲渡論争が再燃

トランプ米大統領が北京を離れた翌日、中国共産党(中共)とロシアは、プーチン大統領が5月19日から20日まで中国を国賓訪問すると発表しました。北京がわずか1週間のうちに米露両国の首脳を相次いで迎えるのは異例です。専門家は、その背景には中露双方の地政学的な思惑があるとみています。また、今回の訪中では、プーチン氏が「中露善隣友好協力条約」を更新する見通しで、中共による領土譲渡をめぐる議論にも再び注目が集まっています。

ロシアの通信社は5月16日、習近平の招待に応じ、プーチン氏が5月19日から20日まで中国を公式訪問すると報じました。

報道によると、プーチン氏と習近平は、二国間関係の重要課題について協議し、中露の包括的パートナーシップと戦略協力について協議します。また、重要な国際・地域問題についても意見を交わす見通しです。会談後、双方は最高レベルの共同声明のほか、政府間や省庁間の文書など一連の文書に署名する予定だということです。

台湾開南大学副学長 陳文甲氏
「これは単なる二国間の相互訪問ではなく、中共が中露の結束はなお堅固だと対外的に示すための政治的演出に近いです。一方で、中共はプーチン氏の訪問を通じて、米中接近への観測を打ち消そうとしています。もう一方で、ロシアは中国訪問を大々的に演出することで、ウクライナ戦争によって自国が国際的に孤立しているわけではないと示そうとしています」

陳氏は、プーチン氏がトランプ氏の訪中直後に訪中すること自体、強い地政学的メッセージを帯びていると分析しています。

一方、台湾国防安全保障研究者の蘇紫雲氏は、米国はロシアと中共の協力関係を切り崩そうとしていると指摘します。しかし、中露はトランプ氏が訪中を終えた直後に行動を起こし、ロシアと中共の緊密な結びつきを強調しました。これは、トランプ氏に対するけん制ともみられるということです。

台湾国防安全保障専門家 蘇紫雲氏
「ロシアと中共は、ともに権威主義体制であり、イデオロギー的に近いです。一方、米中関係は民主主義と権威主義の競争です。そう考えると、米中首脳会談の意義は、衝突リスクの高まりを避けるためのリスク管理にとどまる可能性が高いといえます。中露の協力は、大陸国家としての中露の利益を最大化し、海洋国家である米国に対抗しようとするものです」

ただ、陳氏は、米中対立とロシア・ウクライナ戦争が続く中で、北京は米国の交渉相手であると同時に、ロシアを支える戦略的な存在でもあるという二重の役割を演じようとしていると指摘します。その結果、中共は西側諸国との対立構造にさらに深く組み込まれることになるとみています。

ロシア側はまた、今回のプーチン氏訪中は歴史的にも重要な節目にあたるとしています。今年は「中露善隣友好協力条約」締結25周年、上海協力機構の設立25周年、さらに中露が全面的戦略協力パートナーシップを構築してから30年にあたるためです。

「中露善隣友好協力条約」は2001年、中共の元党首・江沢民とプーチン氏によって署名され、ロシアと中共の長期的な戦略的パートナー関係を確立しました。中国民間では、同条約の第6条が歴史上の中露国境線の98%を承認したことで、中共が約344万平方キロメートルの領土を事実上放棄したとの見方があります。同条約は今年6月に期限を迎えるため、更新が必要となります。

陳文甲氏
「まず、中国国内では、江沢民が当時、帝政ロシア時代の不平等条約を事実上追認し、歴史的に中国のものだとされてきた領土を正式に放棄したのではないかという疑念が長く存在しています。そのため、条約の更新は、中国国内の民族主義感情を刺激し、歴史的正当性をめぐる議論を再燃させる可能性があります。国際社会がより注目しているのは、中露がこれを機に二国間関係を制度化し、長期的なものにするのか、さらには西側に対抗する新たな戦略的枠組みを形成するのかどうかという点です」

陳氏によれば、中露善隣友好協力条約は単なる外交文書ではなく、冷戦後の中露戦略連携の重要な基盤です。仮に更新されれば、既存の国際秩序への対抗姿勢を中露が共同で示す政治的シグナルになるといいます。

プーチン氏は、ウクライナ侵攻を開始する数日前にも中国を訪問していました。中共はこれまで、ロシアによるウクライナ侵攻を非難していません。また、ロシアに対し、兵器製造に転用可能な軍民両用部品を大量に供給してきたとされています。さらに、中国がロシア産エネルギーを大量に購入していることで、米欧諸国の厳しい制裁を受けるロシアは、戦争を続けるための基盤を維持できていると指摘されています。

今回、中共がプーチン氏をどのように迎えるのかにも、国際社会の関心が集まっています。

蘇紫雲氏
「ロシアへの支援については、北京にとっては支援を拡大も縮小もしない現状維持が最も有利でしょう。しかしロシアにとっては、より切迫した状況です。ロシア・ウクライナ戦争はすでに4年半近く続き、ロシアは国力を大きく消耗しています。このため、北京から必要な資源を得たいという思いはより強いといえます」

蘇氏は、北京は現在、情勢を見極めながら利益を得ようとしているとみています。一方で、ロシアのほうが中共に求めるものが多く、これが中露関係における「同床異夢」の主な要因になっていると指摘しています。

 
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