最新の研究データによると、中国では約1億人が債務問題に陥っており、個人の不良債権が急増しています。中国共産党(中共)の機関誌「求是」が異例にも、国民の「雇用と収入に対する見通しが弱い」ことを認め、「家計の財務状況の立て直しを急ぐ」として、消費をさらに押し上げる必要性を訴えました。ただ、複数の専門家は、国民の収入見通しや資産状況が改善しなければ、消費刺激策は空論に終わる可能性があると指摘しています。
中国本土の市民
「私たち庶民が長期にわたって借金を抱え続けるのは、やはり無理があります。生活は苦しく、借金も重なっています。これでどうやって発展できるというのでしょうか」
ブルームバーグは6月18日、調査会社ガベカル・ドラゴノミクスが26行の銀行決算と関連データを分析した結果として、2025年中国の家計部門が抱える不良債務の残高が前年比で21%急増し、2兆2200億元に達したと報じました。
また、浙江大学金融研究院は、中国の金融機関が毎年処理する個人向け不良債権の規模が、2兆〜3兆元に上る可能性があると推計しています。
研究では、2025年末時点で、中国では約1億人の消費者が債務問題に陥り、累計で数兆元規模の不良債権を生み出しているとみられています。これは経済回復の重荷となる重要な要因になっています。
専門家は、債務問題がこれほど広がる背景には、家計が過去に借り入れを膨らませすぎたこと、資産価値の目減り、収入見通しの悪化といった複数の問題が一気に表面化していることがあると指摘します。
米国経済学者 黄大衛氏
「この1億人は単一の集団ではありません。債務問題の主な原因は、過去に借り入れを膨らませすぎたことと、現在の経済の先行きが急速に悪化したことが重なった点にあります。最大の要因は、失業率の上昇、経済活動の低迷、そして資産価格の大幅な下落です」
黄氏によると、中国の家計資産は長期にわたり、不動産や理財商品などの資産運用商品に大きく偏ってきました。近年は住宅価格の下落が続き、一部の資産運用商品では元本や利息の支払いが滞る問題も起きています。その結果、多くの家庭が債務を抱え、家計が行き詰まっているといいます。
黄大衛氏
「将来への見通しも悪化しています。かつて高収入が見込めた業界では構造調整が進み、若者の失業率は2桁台に達しています。内需拡大への影響でいえば、家計のバランスシート不況が深刻です。1億人が消費ではなく返済に追われている状況では、内需は長期にわたり冷え込むことになります」
黄氏は、住宅価格の下落、理財商品の破綻、社会保障の不十分性といった問題が重なり、中国全体のバランスシート不況を深刻化させていると指摘します。さらに、経済運営能力や社会管理能力の低下も加わり、経済リスクは局所的な問題から経済システム全体へと広がりつつあるといいます。
黄大衛氏
「これほど大規模な不良債権は、既存の金融システムにとって巨大な危機であり、挑戦でもあります。中国の銀行のバランスシートに大きな圧力をかけ、金融システム全体にリスクが広がる恐れがあります。資産や債務の移転、デフレが進むなかで、銀行は悪循環に陥っていきます。これは社会全体にとっても大きな試練となります」
注目されるのは、6月18日に中国共産党の機関誌『求是』が掲載した記事です。同誌は、国民の将来の「雇用と収入に対する見通しが弱い」ことが、消費を抑える重要な要因になっていると認めました。記事では、「家計のバランスシートの修復を急ぐ」ことや消費環境の改善を進め、国民が「消費でき、安心して消費し、進んで消費する」環境をつくる必要があると主張しました。
しかし専門家は、現在の消費低迷の根本原因は、単に刺激策が不足していることではなく、国民が将来に対する信頼を失っていることにあるとみています。
台湾南華大学国際事務企業学科教授 孫国祥氏
「消費不足についてより正確に言えば、所得の低さや伸び悩みが根本的な制約になっています。ただし、住宅市場による資産効果や予防的貯蓄といった問題を同時に処理しなければ、実際の消費拡大にはつながりません」
孫氏は、中国では消費を控え、貯蓄に回す傾向が強く、これは構造的な問題だと指摘します。
孫国祥氏
「本当に消費を押し上げるには、国民の収入問題を解決しなければなりません。現在、国民の所得の伸びは鈍く、貧富の差は拡大し、失業率は上昇しています。さらに、不動産市場の低迷や地方政府債務の深刻化もあります。これらいずれも構造的問題です」
一方、国民の重い債務負担は、当局の景気刺激策の効果を弱めています。今年5月、中国の社会消費品小売総額は前年同月比0.6%減となり、2022年以来初めて単月でマイナス成長を記録しました。
専門家は、現在の中国経済が直面している根本的な課題は、単に消費を刺激すれば済む段階ではなく、国民の収入、雇用、資産価値に対する信頼をいかに再建するかにあると警告しています。信頼を取り戻せなければ、個人債務危機は中国経済の回復をさらに押し下げる恐れがあります。




