最近、中国のネット上で「反米闘士」と呼ばれる人々が相次いで過去の投稿を削除し、注目を集めています。一方、米国も中国人に対するビザ審査を厳格化し、米国国民に中国への渡航のリスクを繰り返し警告しています。米中間の人的往来に、いま何が起きているのでしょうか。
中国南開大学の教授で、「科技日報」の元編集長・劉亜東氏は今月5日、中国のSNS上で最近、過激な反米発言が明らかに減っていると指摘しました。
劉氏によりますと、米国はこの2年間、ビザ審査で過去のネット上の投稿まで詳しく調べるようになりました。過去5年間のSNS投稿も審査対象となり、反米的な発言が見つかれば、追加審査や長期のビザ発給拒否につながる可能性があります。このため「慌てて対応する人が少なくない」とし、過去の投稿を削除したり、非公開にしたりする動きが出ています。ただ、米国側は過去のネット上の記録をさかのぼって確認できるため、投稿を削除しても逃れるのは難しいと述べました。
香港紙「明報」は10日、劉氏の文章を引用し、中国では以前から「反米は仕事、米国に行くのは生活」と揶揄されるケースが少なくなかったと論評しました。著名な強硬派評論家である司馬南や反米インフルエンサーだった染香などを典型例として挙げました。
劉氏は、最も興味深いのは、多くのネット上の「反米闘士」が身動きが取れなくなったことだと指摘しました。また結果として、米国側の審査が、こうした「二面的な態度を取る人々」の弱点を突いたとの見方も示しました。
台湾国防安全研究院研究員 沈明室氏
「愛国的な発言であれ、反米的な発言であれ、結局は自分の利益を考えていることが分かります。自らの利益のために愛国的な発言で注目を集め、中国に忠誠を尽くしている、中国を支持していると思わせます。司馬南のような人は多く、表向きは共産党を支持していても、実際には米国に多くの不動産を購入しています。表向きの発言と、本人の本音、実際の生活や経済的な利害はまったく一致していません。生きていくために二つの顔を使い分けているということです」
大紀元のコラムニスト、王赫氏は、中共が世論を厳しく統制するなか、一部の反米論者は体制内で利益を得るために当局の姿勢に迎合しているが、条件が整えば海外に行くと指摘しました。
大紀元のコラムニスト 王赫氏
「中共のこうしたやり方そのものが非常に醜悪で、その結果、奇妙でブラックユーモアともいえる出来事が次々に起きています。中共を良く言うにせよ悪く言うにせよ、結局は(中共は)ろくなものではない、早くここを離れたいと感じています。だからこそ今、中共は出国を厳しく制限し、多くの人を国内にとどめ、出国させないようにしています」
「反米闘士」が相次いで投稿を削除している背景には、米国による中国人へのビザ審査の厳格化があります。
2025年5月から8月にかけて、米国が中国人留学生に発給したF-1ビザの件数は、2017年の同じ時期と比べ46%減少しました。今年7月、米国は中国籍記者に発給するビザの滞在期間を90日に制限すると発表しました。また、ビザ申請者に対するSNS上の投稿の審査も拡大しています。
米国は近年、米国国民に対し、中国では恣意的な法執行や拘束、逮捕、出国制限などに直面する恐れがあるとして、継続的に注意を呼びかけています。米国国務省は現在も、中国への渡航情報を「レベル2」としています。
8月10日、在中国米国大使館・領事館はXへの投稿で、中国へ渡航する米国国民に対し、「STEP(スマート・トラベラー登録プログラム)」への登録を改めて「強く推奨」しました。また、中国渡航に伴う安全上のリスクとして「社会不安」も挙げました。
沈氏は、米国が警戒しているのは一般的な治安問題ではなく、中国の政治や法制度がもたらす制度上のリスクだと指摘します。
沈明室氏
「中共の国家安全部や公安部が外国人を標的にしたり、何らかの理由を付けて突然拘束し、交渉の材料にしたりする可能性があります。このため、米国務省は中国への渡航情報をレベル2の『警戒を強める』に指定しています。最大の理由は、こうした予測できない制度上のリスクです。社会不安という言葉からは、中共内部の権力闘争や、無差別襲撃事件なども連想されるため、この項目が特に重視されています」
一方、王氏は、人的交流の縮小が米中の「デカップリング」の重要な一部になっているとの見方を示しました。
王赫氏
「現在、米中は新たな冷戦に向かい、デカップリングを進めています。特に人的往来は急速に減少しています。双方のデカップリングが進み、冷戦に向けた動きが急速に進んでいます。政治的な不安定さについても、中国国内ではさまざまな矛盾が激化し、経済状況も悪く、内部の権力闘争も激しいです。そのため、政局が大きく不安定化する可能性があるとの判断でしょう」
米国による中国人へのビザ審査の厳格化から、中国渡航のリスクに対する警告まで、米中間の人的交流は、かつての開かれた往来から、安全保障上の審査とリスク回避を重視する方向へ変わりつつあります。相互不信が強まり、安全保障上の規制が広がるなか、こうした変化が今後の米中関係をどこへ向かわせるのか、引き続き注視する必要があります。




