マイクロソフト 中国事業縮小へ 低収益と地政学リスクが重荷

米中貿易戦争が始まって以降、外資系企業は相次いで中国での事業体制を見直しています。米マイクロソフトも中国事業の縮小を進めており、過去5年間に中国で少なくとも15の拠点や合弁会社を閉鎖しました。

近年、米中間の貿易摩擦が続くなか、米国企業を含む多くの外資系企業が中国市場から撤退したり、撤退を検討したりしています。マイクロソフトも例外ではありません。

ロイター通信によると、企業の提出資料から、マイクロソフトは過去5年間に中国で少なくとも15の拠点や合弁会社を閉鎖したことが分かりました。社内事情に詳しい5人の関係者は、こうした動きを同社が進める「撤退戦略」と表現しています。

台湾の国防安全研究院助理研究員 王綉雯氏
「企業経営の本質は利益を追求することです。中国でのマイクロソフトの売上高は世界全体の1.5%にすぎませんが、地政学的な変化や、中国が進めるAI技術の国産化に伴うリスクを負わなければなりません。これまで中国で順調に事業を展開してきたとしても、事業環境が厳しいなか、中国事業を縮小せざるを得ないでしょう」

関係者によると、マイクロソフトは2023年の時点で、中国からの全面撤退について社内で本格的に検討していました。一部の幹部は、中国で大きな地政学的リスクを抱える一方、得られる経済的な見返りは限られていると考えていました。

米国の経済学者 黄大衛氏
「これは非常に重要な問題を示しています。中国では、外国のIT企業が当局の規制に従ったとしても、長期的に主要市場で事業を続けられるとは限りません。つまり、マイクロソフトが中国(中共)当局の要求に従うかどうかではなく、企業に中核的な機密や技術まで提供させるか、応じなければ市場から退出させるということです」

マイクロソフトは近年、中国で二つの大きな課題に直面しています。

一つは、中共が2017年以降、ソフトウェアの国産化を強力に進め、それに対応する調達指針を打ち出してきたことです。これにより、Windowsなど外国製OSは、中共当局が掲げる「安全で信頼できる」とする基準を満たすことが難しくなっています。

王綉雯氏
「現在、中共はAI分野で米国を追い越せると考えているのだと思います。そのため、政府調達では国家安全保障上の理由からマイクロソフトなど外国企業のシステムを使わないだけでなく、将来的には民間企業も外国製システムの使用を認められなくなる可能性があります。マイクロソフトの経営陣もこうした流れをすでに見ており、中国での将来性を楽観視していないため、事業縮小や中国からの撤退を計画しているのでしょう」

もう一つは、米国政府による厳しい半導体や先端AI技術の輸出規制です。これにより、マイクロソフトを取り巻く環境は一段と厳しくなっています。2024年時点で、中国市場が同社の世界売上高に占める割合はわずか1.5%でした。

黄大衛氏
「今後、中国事業でマイクロソフトにとって最も価値があるのは、政府や国有企業向けではなく、中国企業の海外展開を支援する分野かもしれません。中国企業が海外に進出して事業を展開する際には、クラウドサービスやデータ統合、コンサルティング、海外事業に関する助言などが必要になります」

関係者によると、マイクロソフトは最終的に、一部のトップ研究者を中国以外の地域へ移すことを決めました。マイクロソフト・リサーチ・アジアは、バンクーバー、シンガポール、東京に研究拠点を設けています。

王綉雯氏
「現在、米中のAI分野での競争はますます激しくなり、双方とも同盟国の支持を取り付けようとしています。米国政府がパートナー国に米中どちらかの立場を選ぶよう求めれば、マイクロソフトなど米国企業が中国市場に残り続ける理由もなくなります。中長期的に見れば、マイクロソフトは中国事業を大幅に縮小せざるを得ないでしょう」

現在、マイクロソフトは中国から直ちに全面撤退するのではなく、収益性が低く政治的リスクの高い現地拠点を閉鎖する一方、多国籍企業の顧客にサービスを提供できる事業や、技術者を確保できる事業は残しています。

こうした縮小路線は、米国のIT企業が中国で迫られている難しい選択を映し出しています。中国市場の規模には依然として魅力がある一方、実際に事業を展開できる範囲はますます狭くなっています。

王綉雯氏
「かつて中国が外資系企業との協力に積極的だったのは、技術を手に入れるためでした。中国自身が技術を開発できるようになると、外国大手は徐々に排除されたり、冷遇されたりするようになります。中国市場では、マイクロソフトの製品やサービスが中国企業の類似製品に置き換えられつつあり、将来的には完全に市場から締め出される可能性もあります」

中国で大規模な事業を展開するほかの米IT大手も、リスクの見直しを進めている。

Appleは2026年末までに、米国向けに販売するiPhoneの大半をインド生産へ移す計画です。また先月には、テスラが中国事業の分離を検討しているとの報道も出ています。

 
関連記事