中国ネットで「言い換え表現」広がる 学者「中共の検閲が言語文化を損なう」

中国のネット上でよく使われる「隠語」をまとめた動画が話題になっています。警察を「帽子のおじさん」、お金を「米」、酒(中国語で9と同じ発音)を「8+1」と呼ぶといったものです。専門家は、本来は犯罪組織などが使う隠語が中国のネット上で広がっている背景には、中国共産党(中共)の言論統制があり、中国語と中国文化を組織的に破壊していると指摘しています。

8月17日、中国のあるブロガーが、ネット配信で使われる「隠語」のルールを紹介する動画を投稿し、急速に拡散しました。

中国のブロガー
「警察を警察と呼んではいけません。『帽子のおじさん』と呼びます。酒は酒ではなく『8+1』。感染拡大は『感染拡大』ではなく『マスク事件』。お金はお金ではなく『米』と呼びます…」

動画が拡散すると、ネットユーザーからも次々と例が寄せられました。習近平は「包子」、投稿削除は「404」、取り調べを受けることは「お茶に招かれる」、政治的な介入は「不可抗力」、六四事件は「5月35日」などです。

あるネットユーザーは、次のように嘆いています。「おそらく言葉が最もおかしな姿になる瞬間とは、ある単語が禁止された時ではありません。誰からも『その単語を使ってはいけない』と言われていないのに、自分から使わないことを覚えてしまった時なのでしょう」

中国の作家で歴史研究者の遇羅文氏は、こうした奇妙な言語現象は、中共による強い統制が生み出したものだと分析します。

中国作家 歴史研究者 遇羅文氏
「例えば私が『六四(天安門事件)』と明言すれば、発言を封じられたり、当局に呼び出されたりする恐れがあります。要するに、人々に恐怖や不便を感じさせるわけです。そのため、同音の言葉や、誰もが意味を理解できる別の言葉に置き換えるしかなくなります」

遇氏によると、中共は大量の「敏感語」を指定しており、ライブ配信では口にできない言葉が数多くあります。そのため、人々は次々と新しい言葉を作らざるを得なくなっています。

遇羅文氏
「こうした言葉が出てくると、コンピューターがすぐに識別し、文章や発言が封じられます。そのため、規制を避けるには、同音の言葉や別の表現に置き換えるしかありません」

遇氏は、この「隠語」の仕組みは誰にでも理解できるものではなく、普段ネットを利用しない人や高齢者には意味が分からず、意思疎通に大きな支障をきたしていると強調します。コミュニケーションや文化の発信を大きく損ない、文化そのものの破壊につながっているといいます。

遇羅文氏
「中共の統治下では、こうした状況を変えるのは難しいのです。中共が強圧的な統治を行い、誰もが自分の身を案じているため、こうした方法で統制を避けるしかありません。中共が倒れれば、この現象も徐々に消えていくでしょう。おそらく中共が存続する限り、今後さらに深刻になっていきます」

遇氏は、この「隠語」の広がりを、中共が中国の伝統文化を敵視してきた大きな流れの中で捉えています。相声(中国漫才)やトークショー、コントが規制され、出演者が活動を禁じられることや、最近では少年が父親の「反動的な発言」を通報する事例などを挙げ、こうした現象は文化大革命の再来だと批判しました。

遇羅文氏
「文芸作品や文化発信に対し、ますます厳しい検閲制度を敷いています。これも文化を破壊する極めて悪質な手法です」

山東法学院の教員である王さんは、言語と文化の関係という観点から問題を指摘します。正常な社会では、言語は意思疎通の手段であると同時に、文化を受け継ぐ役割も担います。本来、隠語を必要とするのは犯罪組織などだといいます。

山東法学院教員 王さん
「犯罪組織が隠語を使うのは、通常の監視を逃れ、違法行為や犯罪を行うためです。それなのに今は、一般の市民や普通の中国人まで隠語で話すよう強いられています」

王さんは、中国語では一つ一つの文字や発音にも文化的な意味が込められており、それを別の言葉に置き換えることで、思考や認識に混乱を招く恐れがあると話します。

王さん
「例えば『お金を稼ぐ』と言えば、アカウントを封鎖されることがあるため、『米を稼ぐ』と言います。米は本来食べ物なのに、それがお金を意味するようになり、言葉そのものが混乱してしまいます。こうした隠語は人の思考を混乱させます。このまま次の世代、その次の世代へと続けば、『米』と『お金』の違いさえ分からなくなってしまいます」

王さんは、中共による統制は文化を「骨抜き」にし、変質させる行為でもあると指摘します。さらに深刻なのは、人々が自ら発言を控える自己検閲が広がることだといいます。その結果、思考が硬直し、判断力が低下してだまされやすくなるほか、創造力も失われると語りました。

王さん
「中共が触れることを禁じている情報には、あえて触れようとしません。そのため、何が真実で、何が偽りなのかを自分で見分けることもできなくなります。奴隷には立派な建物は造れないという言葉があります。奴隷は自由を追い求めることを恐れるため、創造力を持てず、大きな成果を上げることもできません」

王さんは、中国が正常な社会秩序を取り戻すには、中共による独裁を終わらせ、ネット検閲を撤廃する必要があると指摘しました。そうして初めて、中国人は「隠語」を使わずに話せるようになります。

 
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