中共ロケット軍 異例の腐敗情報募集 新たな粛清か

中国共産党(中共)ロケット軍が異例の公告を出し、社会に向けて不正調達に関する情報提供を呼びかけました。対象は兵器・装備の調達だけでなく、日用品や生活サービスにまで及びます。情報提供の期限は10月に開かれる中共第5回中央委員会全体会議(五中全会)の後に設定されています。単なる腐敗摘発ではなく、習近平が軍権を固めるために進める新たな粛清と政治的な地ならしで、標的は「2人の張」だとの見方が出ています。

中共中央規律検査委員会の第6回全体会議が閉幕した直後の8月24日、ロケット軍は調達をめぐる違反行為の情報を社会から広く募ると表明しました。

対象となるのは、ロケット軍が実施する物資、サービス、工事、副食品、医薬品・消耗品などの調達活動における違反行為です。調達計画の策定、調達審査、契約履行、オンライン調達のほか、入札代理機関が実施する事業も含まれます。

調査対象には、供給業者、審査専門家、入札代理機関、入札代理人、軍内部の関係者などが含まれます。公告では通報用の電話番号を公開し、情報は事実に基づき、証拠資料を添えるよう求めています。

締め切りは今年11月30日で、10月に開催される五中全会の後に当たります。

ロケット軍は中共の戦略ミサイル部隊で、2015年末に旧第2砲兵部隊を改編して発足しました。中央軍事委員会の直属組織で、核・通常戦力を併せ持つ戦略部隊と位置づけられています。

ロケット軍の司令官を務めた魏鳳和、周亜寧、李玉超、王厚斌の4人は全員失脚しました。装備発展部長を経て国防部長となった李尚福も摘発されました。これまでに公式発表で失脚が確認されたロケット軍の将官は11人に上り、司令官、副司令官、参謀長、政治工作部主任、装備部長、副部長など、主要ポストの幹部がほぼ粛清されました。

米国在住の時事評論家、唐靖遠氏は、この時期に社会全体から情報を募る動きは五中全会をめぐる権力闘争と結びついており、標的は「2人の張」、すなわち中央軍事委員会副主席の張又俠と、現職の中央軍事委員会副主席、張升民だと分析しています。

米国在住の時事評論家 唐靖遠氏
「張升民はロケット軍に丸11年間いました。現在のロケット軍の問題を深く調べるにしても、過去の問題を掘り起こすにしても、彼は習近平派ではありません。ロケット軍は発足当初から一貫して、習近平派ではない勢力が掌握してきました。いまロケット軍を調べるということは、張升民の過去の問題を掘り起こすことでもあります。張又俠を狙っていることも考えられます」

張又俠は2012年に総装備部長に就任し、2015年から中央軍事委員会装備発展部の初代部長として、軍の兵器・装備の研究開発と調達を担当しました。2017年には中央軍事委員会副主席に昇格しましたが、今年1月に失脚しました。

唐氏は、張又俠に対する現在の容疑だけでは足りず、証拠も十分ではないため、過去の問題をさらに掘り起こそうとしているのではないかとみています。

唐靖遠氏
「張又俠はいま、罪名も証拠も足りないのかもしれません。そのため当局は、装備発展部長時代にロケット軍の調達をめぐる不正がなかったか、過去にさかのぼって調べようとしています。そこから新たな材料を見つけ、最終的に張又俠に対する容疑を固めたいのでしょう」

中共は2023年7月にも、装備調達の審査専門家を対象に過去の違反情報を募りました。昨年9月にはロケット軍が軍事調達の大規模な是正に着手し、9年間にさかのぼって調査を実施しました。180件の公告を出し、入札評価の専門家74人と供給業者116社を処分しました。

米国在住の時事評論家 邢天行氏
「今回の動きは、ロケット軍を再び粛清するというメッセージを外部に発したに等しいです。大きな動きが迫っているかのような緊張した空気をつくり出しています。習近平には続投するとの観測も出ています。自分が権力の座から下ろされることを警戒し、軍に異変が起きることも恐れているから軍への統制をさらに強めるはずです」

邢氏によると、軍内部の生活サービスや後方支援の分野は長年、高官の家族やその周辺が請け負うケースが多かったのです。利益が大きく安定しているため、外部業者が参入しにくい分野でもあります。ここに調査の手を伸ばせば、複雑に絡み合った縁故関係に波及し、関係者全体に強い圧力をかけることになります。

邢天行氏
「ロケット軍はすでに習近平による一連の粛清を受けています。それでも習近平はロケット軍に強い不安を抱き、信用していません。そこに再び手を入れようとしています。実際の目的は、ロケット軍の背後にいる人々や、関連する勢力を威嚇することです」

邢氏はさらに、2025年末には空軍でも同様の情報提供募集が行われたものの、その後、続報はなく、司令官が1人交代しただけだと指摘しました。このため、今回の動きも人事刷新に向けた布石ではないかとみています。

ロケット軍上層部では現在、多くのポストが空席となっています。新たな幹部を昇進させて空席を埋めるには、当局として「問題はすでに処理した」とする形を整える必要があるといいます。

 
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