中国とネパールの国境地帯で大規模な土石流が発生し、チベットの吉隆国境検問所が壊滅的な被害を受けました。災害発生後、中国共産党(中共)当局は、現場を撮影した動画をネット上から相次いで削除し、死者数を推測したネットユーザーを「デマを流した」などとして拘束、処罰しました。
監視カメラの映像では、先月26日午前、高さ数十メートルに及ぶ土石流が押し寄せ、合同検査ビルや駐車場、立ち並ぶ商店やホテル、多数の車両を一瞬でのみ込みました。多くの人が慌てて逃げたものの、土石流に巻き込まれました。
災害後の空撮映像や中共中央テレビの映像では、検問所一帯の建物が流され、基礎部分やむき出しになった鉄筋、変形したタイヤなどが残るだけとなっています。
中国メディアが吉隆の被災現場で確認したところ、当日の洪水は一時、20階建ての建物ほどの高さに達したといいます。
吉隆国境検問所には土石流が2度押し寄せた可能性もあります。1度目は上流へ逆流し、2度目は南へ流れ下ったとされ、甚大な被害をもたらしました。
吉隆国境検問所はチベット最大規模の陸路検問所で、年間を通じて開放されています。貿易も盛んで、周辺には建設作業員や国境警備関係者、商店主、国境を行き来する旅行者らが多くいます。
中共が現地で進めてきたダムや水力発電所の建設、鉱山開発が災害をさらに深刻化させたとの見方も出ています。
中国民主党創設者の一人 朱虞夫氏
「今、自然からの報復を受け、多くの人命が失われました。それでも隠蔽しようとしている。いつも同じです。今回はネパールにも影響が及んでいます。もしネパール側で死者が出ず、亡くなったのがすべて中国人だったなら、中共は隠し通せたでしょう」
吉隆国境検問所は2本の川が合流する谷底に位置します。2025年にも氷河湖の決壊による土石流が発生しており、同じ氷河湖は2023年にも決壊していました。
今回の災害発生からわずか数時間後、チベット党委員会は通知を出し、党員に「被災地の社会の安定と人心の安定を確保する」よう求めました。対応が不十分と判断された者は責任を問うとしました。
現地取材したBBCの中国特派員は、地元のチベット人が記者と話したり、真実の情報をネット上に投稿したりすれば、拘束や逮捕される恐れがあると述べました。また、チベットの取材対象者と連絡を取るのは、北朝鮮の取材対象者と連絡を取るより難しいと語りました。
8月27日夜、世界のメディアがこの大規模災害を大きく報じる中、中共中央テレビの「新聞聯播」が最初に伝えたのは『習近平文化文選』の出版でした。
同時に、中国の各プラットフォームでは、災害に関する動画や画像が次々と削除されました。メディアは中央テレビの報道を転載することしか認められず、災害情報を転載したり議論したりした多くのネットユーザーが処罰を受けました。
8月30日、チベット警察は、いわゆる「典型的事例」10件を公表しました。少なくとも10人のネットユーザーが死者数を推測する投稿をしたことで、「デマの拡散」「公共秩序の混乱」などとして処罰されました。
中共は当初、死者3人、行方不明者265人と発表しました。その後、死者16人、行方不明者546人に更新しました。しかし、犠牲者の名簿は現在も公表されていません。道路も早い段階で封鎖され、外部から現地に入るのは難しい状況です。
中共が事前に警報を出さず、投稿削除やアカウント封鎖、拘束を進めたのとは対照的に、ネパール当局は災害の前後に67万件の警報メッセージを送り、死者や負傷者、行方不明者の数を更新してきました。
8月31日午前9時時点で、ネパール側の死者は903人、行方不明者は4247人に上りました。
中国人権弁護士連盟の理事長、呉紹平氏は、同じ災害が国境の両側で起きたことで、2つの政治体制の違いが浮き彫りになったと語りました。
中国人権弁護士連盟理事長 呉紹平氏
「ネパールは貧しく、経済発展も十分ではありません。しかし中共と比べれば、人間を人間として扱っています。災害が起きれば、すぐに状況を確認し、捜索・救助に入り、最新の数字も公表します。一方、中共はいつも事実を隠し、真相を明らかにしようとしません。これが違いです」
呉氏によると、中共が実際の数字を公表せず、国民による推測も認めないことで、死者を「行方不明者」の名簿に残すなど、数字を操作しやすくなります。遺族が補償を受けられなくなるほか、警報を出さず、避難誘導を行わなかった行政側も責任を免れられるといいます。
呉紹平氏
「中共はこれまで一貫して真相を隠してきました。独裁政権では、真実を語ろうとしたり、真相を暴こうとしたり、真相に近づこうとするだけでも罪になります」
呉氏は、大飢饉や文化大革命、天安門事件、唐山大地震、天津大爆発、鄭州の洪水、最近の横州ダム決壊に至るまで、災害や事件による死者数は中共が公表しないまま、真相不明となってきたと述べました。
呉紹平氏
「同じことが今日、チベットの吉隆国境検問所で繰り返されているだけです。独裁政権にとって、すべての死者も行方不明者も、単なる数字にすぎません。場合によっては、その数字にすら含まれません」
中国民主党創設者の一人 朱虞夫氏は国際社会に対し、死者数だけをめぐって議論するのではなく、根本原因を追及するよう呼びかけました。
極めて脆弱な高原の生態系の破壊から、世界に被害を広げたウイルス禍に至るまで、「一つ一つについて中共の責任を追及しなければならない。そうでなければ、次はさらに大きな災害になる」と訴えました。




