米ミズーリ州が中共や関連機関に新型コロナを巡る損害賠償を求めた訴訟で、新たな動きがありました。長年にわたり出廷を拒んできた湖北省政府が、米国大手法律事務所を起用し、裁判所に判決の取り消しを求めました。専門家は、中国共産党(中共)の痛いところを突くのは世論の批判ではなく、すでに下された賠償判決と、今後の強制執行だと指摘しています。
ロイター通信は8月31日、湖北省政府と中国科学院が、大手法律事務所ホワイト&ケースを起用し、ミズーリ州東部地区連邦地方裁判所に対し、中国側に下された245億ドルの欠席判決を取り消し、訴訟を棄却するよう申し立てたと報じました。
ホワイト&ケースには2500人を超える弁護士が所属します。弁護を率いる訴訟部門のシニアパートナー、クリストファー・カラン氏は、これまでにも外国政府を代理して米国の裁判所に出廷した経験があります。
裁判資料によると、中国側の代理人は、米国連邦地方裁判所には「管轄権がない」と主張し、判決は「外交問題への不当な介入だ」と訴えています。
訴訟は2020年に始まりました。ミズーリ州は、中共が感染拡大の初期段階で実態を隠蔽し、政府主導で医療用防護物資を大量に買い集めたことで、世界市場で供給不足と価格高騰を引き起こし、同州に損害を与えたと主張しています。
カナダ中医学院のジョナサン・リュー教授は、中共による防疫物資の大量確保は実際に行われ、海外の医療現場に深刻な影響を及ぼしたと指摘しました。
カナダ中医学院 Jonathan Liu教授
「防護物資の買い占めについて言えば、マスクや医療機器が不足した時期を、私たちは実際に経験しました。中共は必要な物資を海外に供給せず、通常の貿易を意図的に妨げました。当時、医療物資が非常に逼迫したのは事実です。私自身も経験しており、カナダでも深刻な状況でした」
中共側は長年にわたり、訴訟に応じず、出廷もしない姿勢を続けてきました。
2025年3月、連邦判事は欠席判決を下し、中共当局、湖北省政府、武漢ウイルス研究所などの被告に245億ドルの賠償を命じました。
その後、ミズーリ州司法長官事務所は、中国関連の団体が所有する農地なども含め、中共政権の当局者が米国内に保有する資産の追跡や差し押さえを検討すると表明しました。2025年11月には、判決を執行するため、米国内にある中共政権所有の資産から賠償金を回収する方針を中国側に通知するよう、米国務省に協力を求めました。
米国のウイルス学者、林暁旭博士は、245億ドルの欠席判決で中共にとって特に大きな問題となるのは、具体的な賠償命令が下されたことと、今後、資産を対象とした強制執行が行われる可能性だと指摘します。
米国ウイルス学者 林暁旭博士
「中共は、2019年秋に武漢で何が起きたのか、武漢ウイルス研究所の関係者に異常がなかったのか、なぜ初期の検査設備を集中的に調達したのか、なぜ外部への情報提供が遅れたのかといった問題について、長期間説明を拒み続けます。こうした疑問に対しては、『起源調査の政治化だ』『中国へのレッテル貼りだ』という一言で退けます。しかし、ミズーリ州の訴訟は違います。感染拡大を巡る責任を、道義的な非難から、米国連邦裁判所が認定した賠償債務へと変えたからです」
米国側で賠償金回収に向けた圧力が強まる中、中共側も別の動きに出ました。
昨年12月、武漢市側は武漢市中級人民法院に訴訟を起こし、ミズーリ州と関係当局者に505億ドルの賠償と公開謝罪を求めました。
米在住の時事評論家 唐靖遠氏
「これはただ、政治的な姿勢を示すためのものです。米国で訴えられたから、中国でも相手を訴えます。それによって双方が対等であるかのような構図を作ろうとしています。中共は、米国で進められている司法上の措置に対し、政治的・外交的な発想で対応しています」
湖北省政府がホワイト&ケースを起用し、判決の取り消しを求めたことについて、ミズーリ州司法長官事務所は、中共が異議を申し立てるには「数年遅すぎる」と反論し、感染拡大によって生じた損害の責任を引き続き追及するとしています。
一方、唐氏は、判決が維持されたとしても、ミズーリ州が実際に資産を差し押さえるには高い法的ハードルがあると述べました。
唐靖遠氏
「米国の『外国主権免除法』では、外国政府の資産に対する強制執行について、訴訟そのものよりも厳格な免除規定が設けられています。ミズーリ州内にある中共関連資産を一方的に差し押さえるには、多くの条件を満たさなければなりません。さらに、対象となる財産が米国内で商業活動に使われていることも条件となります」
賠償金の回収には、なお法的な障壁が残る可能性があります。しかし専門家は、この訴訟が先例として持つ意味は大きいとみています。
中共への責任追及は、世論による非難から司法判断の段階に入り、今後は資産差し押さえによる賠償金回収に発展する可能性もあります。




