【ストレッチの効用】アスリートでないあなたこそ、時間をとってやるべき

エクササイズをした後に、筋肉の回復を早めるためにストレッチをする価値について色々と誤解があるようです。「ストレッチによる疲労で溜まった乳酸を除去する」と言ったような説が広まっていますが、本当でしょうか?

まあ、近いものがあります。

まず第一に、疲労回復のためのストレッチと、シェイプアップのためのストレッチの違いを知る事が重要です。

リカバリー

運動をしている間、筋肉は脳から働くように指令を受けます。その間に使われた燃料の燃えかすが生成され、筋肉の繊維質構造に複数の小さなヒビが入ってしまいます。宴会を例にすると、開催中に料理は食べられ、ナプキンや鳥の骨などのゴミが溜まり、きれいに整えられたテーブルは乱れてしまいます。次の宴会が始まるまでに料理を作り、ゴミを片付け、テーブルを整え直さなければなりませんよね。

筋肉も同様に、次のイベントに備えてリセットしなければなりません。この過程をリカバリーと呼びます。リカバリーすることで、筋肉は痛みを感じることなく完璧に機能することができるのです。

リカバリーで身体改造ができる訳ではありませんが、短期間に何度も、最高のコンディションで試合に臨まなければならない運動選手にとっては、非常に重要なプロセスなのです。

運動選手たちは短時間でリカバリーできるよう、数々の方法を試しています。少し例をあげるだけでも、凍結療法、マッサージ、冷却圧縮療法、寒冷療法、ストレッチ、高気圧酸素療法、抗炎症薬、電気刺激療法など様々あります。

その中で、唯一安定した効果が期待できるのがマッサージです。ストレッチは疲労物質の除去や筋肉のリカバリーを早めるのに大きな効果はないことが複数の研究で明らかになりました。

リモデリング

私たちの殆どはプロの運動選手ではありませんが、健康のためや体重を減らすため、あるいは気晴らし等の理由で運動をしています。

そのため、運動からの筋肉リカバリーではなく、運動による身体のリモデリング、改造により効果に注目する必要があります。

平たく言えば、運動を続けていると、体は筋肉の構造、代謝、生理機能を変えることで運動によるストレスに対応しようとします。この変化、リモデリングが運動の効用をもたらすのです。先ほどの宴会の例を使えば、毎夜500人のゲストが来ると分かっているのにテーブルが10個しかない場合、次のイベントに備えて、調理の効率を上げ、テーブルの数を増やすなどして対応能力を強化しますよね?私たちの身体も同様に、増加する運動に対応するために体をリモデリングするのです。

運動による体のリモデリング効率を上げる方法を特定すべく、多くの研究が行われています。35年以上に亘る研究の結果、運動に反応した体のリモデリングをサポートする六項目が明らかになりました。栄養分、特にタンパク質を摂取するタイミング、エクササイズの種類、マッサージ、睡眠、少量のクレアチンの摂取、そしてもう一つは何だと思いますか?ご想像通りストレッチなのです。

筋肉ストレッチ運動については、可動領域を広げる又は維持する、骨と関節の位置を補正する、結合組織を強化するという効用が最も良く認知されています。いずれも運動能力の向上に必要なものです。

筋肉の機能改善に、筋肉ストレッチ等をプログラムに取り入れて経過を観察する柔軟性トレーニングが直接作用することは、様々な研究で証明されています。超音波検査により、数週間の定期的なストレッチ後の長い筋繊維の形成といった筋肉構造の改善が認められました。最近の研究では、動物実験の結果、ストレッチの継続による筋肉への血流改善が明らかになりました。

過去の筋肉ストレッチの効用について否定的な意見が、人々に誤解を与えてしまったのかもしれません。トレーニングや試合前の決まりきったストレッチ運動(伸ばして30秒間静、その後緩めてからストレッチ)は筋肉を弱体化させ、運動の前のストレッチで怪我を防ぐことはできないというのは、研究結果からも事実です。しかし、これは運動選手に限った特殊な状況であり、一般の人達には当てはまりません。

では、ストレッチはすべきなのでしょうか?

もしあなたが、一流のアスリートで、怪我を避け、スタミナを向上させ、次の試合前までに早く筋肉を回復させなければならないのでしたら、答えはノーです。

でも、もしあなたが他の多くの人達と同様、体重を減らしたり、健康維持や気分転換が目的で運動しているならストレッチをすべきです。筋肉ストレッチは筋肉構造を改善し、結合繊維を強化し、可動領域を拡大し、関節の位置を補正する他、ストレッチ後の運動中における血流改善の可能性もあります。これら全ては、長期的に見て体に良い効果を与えてくれるものばかりだからです。

(著者のデビッド・プロローゴ氏はエモリー大学放射線医学及びイメージングサイエンス学部の准教授で、この記事は非営利メディア「ザ・カンバセーション」で発表されたものです)

 
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