【動画ニュース】中国の学校に顔認証システム導入 スウェーデンでは違法判決

中国当局によるデータ監視網が国全体に広がっています。江西省のある居住区では、住民は顔認証を行わなければ帰宅できなくなり、江蘇省のある高校にも顔認証機が設置されました。一方、スウェーデンの学校が顔認証システムを採用したところ、学生のプライバシーを侵害するとして罰金が科せられました。

中国の信教の自由と人権について報道するイタリアのオンライン雑誌『ビター・ウィンター(Bitter Winter)』は9月1日、江蘇省の現地公安局が今年6月、ある居住区へ監視カメラ195台を設置したほか、居住区の入り口に身分証認証機や顔認証機などの監視設備を設置して、認証にパスしなければ居住区へ入れなくしたと報じました。居住者の個人情報がすべてシステムに記録されたことで、住民はどこへ行っても監視の目から逃れられなくなっています。

報道によると、7月19日の時点で、北京市保障性住宅建設投資センターが扱う13の公共賃貸住宅で、居住者が帰宅にあたり顔認証を求められるようになりました。顔認証システムのデータベースにはすでに約7万件の賃借人(ちんしゃくにん)の情報、6万件あまりの同居者の情報が収集されています。また今年10月末までにさらに多くの住民情報が収録されることになっています。

インターネットの自由ウォッチャー、古河氏
「居住区へのデジタル顔認証機の設置は、実際には中国当局による治安維持を進めるために行われた措置だ。その目的はすべての不安定要素の芽を摘み取ることだ。こうした『顔認証』は住民のプライバシーを非常に侵害する」

インターネットの自由ウォッチャーの古河(こが)さんは、こうしたプライバシー侵害は中国大陸では当たり前のことだとして、中国共産党が民衆情報データベースを構築したのは民衆への監視をしやすくするためで、民衆はなすすべもなくそれを受け入れるしかないのだと語っています。

インターネットの自由ウォッチャー、古河氏
「最も重要な点は、どんな時でも人々は政府への不満を表明できず、(権利などが)侵害されても政府に怒りを表明できないことだ。政府に怒りを表明したら、政府は当然治安維持活動を行う。すでに民衆は政府から監視されることを当たり前に思っている」

中国の元ジャーナリストでネットワークエンジニアの周曙光(しゅう・しょこう)さんは、ジョージ・オーウェルの小説を例に挙げて、中国当局の統治下における集権社会の発展方向を示唆しています。周さんは、共産党統治下の中国社会において、統治される民衆にプライバシーは存在しないが、統治者は自身のプライバシーを完全に保っており、彼らのやることは議論もされず、疑われもせず、抵抗もされないと述べています。

中国の元ジャーナリストでネットワークエンジニアの周曙光氏
「社会全体が中央集権に向かっている。たとえばオーウェルの小説『1984』ではそうした不条理な状況が描かれている。つまり人々の一挙手一投足が政府の厳格な監視下に置かれる。人々のプライバシーは完全に失われ、自由も奪われ、いつでも陥れられたり侮辱されたりされるようになる」

上海の澎湃新聞(ザ・ペーパー)ウェブサイトは先日、江蘇省の南京中医薬大学が今年の新学期が始まる前に校門、学生寮の入り口、図書館、実験棟などに顔認証システムを導入したと報じました。学生や教職員は顔認証にパスしなければ校内に入ることができません。

しかし海外には、顔認証技術の導入を禁止した学校もあります。

香港の星島日報は8月29日、スウェーデン北東部の都市、シェルレフテオー市の教育部門が顔認証技術を試験的に導入して高校生の出席率を記録したところ、条例違反と学生のプライバシーの侵害の罪に問われ、スウェーデン・データ保護機関(DPA)により20万クローナ(約222万円)の罰金が科せられました。

周曙光さんは、顔認証技術の使用がモラルと社会制度にからんでいると指摘し、中国共産党の一党独裁政権下では、政府が実施する政策を妨げるものは存在しないため、政府が人権を侵害し、最低限のモラルも守らないといった状況が常に生じるが、民主主義社会では人権擁護を考慮する必要があると語っています。

中国の元ジャーナリストでネットワークエンジニアの周曙光氏
「民主主義国家においては、顔認証システムなどの物議をかもしている技術が導入される前に、その技術が人権を侵害しないかどうか、もしくは現行の法律法規に違反しないかどうかが真剣に討議される。このようなモラル上の問題をまず解決しなければ導入に至らない」

報道によると、スウェーデンの現行の法律では顔認証技術で収集されたデータとその生体データは特殊データに分類され、用途が厳格に制限されています。また今回は初めてスウェーデン当局がプライバシー保護条例を適用して条例違反者を起訴し、有罪判決を下したうえで罰金を科しています。

古河さんは、共産党が統治する中国では、民衆管理が必要な時は、当局はプライバシーを持ちだして対処するが、政府が不利な状況に直面したら、民衆のプライバシーなどまったく意に介さないと述べています。

 
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