都市封鎖の悲惨な世界を伝える西安版『方方日記』

西安市で都市封鎖が始まってから2週間が過ぎ、当局の行き過ぎた感染症対策によってさまざまな苦難が続出しています。西安のジャーナリスト江雪さんは先日、『都市封鎖日記』を発表して一般人が余儀なくされている苦しい生活を明らかにしました。この『日記』は『西安版方方(ファンファン)日記(武漢日記)』とも呼ばれています。

陝西省西安市民
「居住区ではすでに物々交換が行われるようになった。うちにある米一袋を交換してくれないかと隣人が言っている」

西安市では、1300万人が当局から外出禁止を命じられています。インターネットには、食糧が底をついたために一部の住民が物々交換を始めたほか、手持ちのiPhoneを米と交換する人すらいると投稿されています。

陝西省西安市民
「ここにスマートフォン1台とタブレット1台がある」

西安市の都市封鎖からすでに2週間以上経ちましたが、現地住民は行き過ぎた感染症対策が住民を苦しめていると明かしています。

1月4日、ある西安市民がインターネットに、妊娠8か月の自分の親戚が病院にすぐに対処してもらえなかったため流産したと投稿しました。

陝西省西安市民
「(血が流れて)地面がどうなっているか見てみて。私は今、高新医院の入り口にいる。ここは(西安の)高新医院だ」

別の西安市民が撮影した動画には、当局が高架橋の下のトンネル内に隔離者収容用のベッドを設置している様子が撮影されています。このほか、何もない粗末な部屋に隔離されて泣いている女性の動画も投稿されています。

また、感染症対策員からようやく野菜を受け取ったと思ったら、「政府に対する感謝」を強要されている住民の姿もあります。

西安の感染症対策員
「あの言葉を言って」

西安市民
「ああ、政府に感謝します。政府に感謝します」

西安市は、都市を封鎖しただけでなく、人の「口」も封鎖しました。西安市当局はウィーチャット公式アカウントを通じて、ウィーチャットグループはすべて監視されており「ネガティブな情報を伝えたことが発覚した場合、そのグループを封鎖する」との緊急通知を発しました。

こうした状況の中でインターネットに公開された、西安のジャーナリスト江雪さんの記す都市封鎖日記『長安十日』は、西安版『方方日記』だと言われています。

江雪さんは「何日も野菜が買えない状態が継続しているのは、本質的にはやはりそれが人為的な災難だからだ。西安には物資不足は存在しない。単に物資がそれを最も必要としている人の手に渡りづらいだけだ」と綴っています。

西安市民の趙さんは、江雪さんの都市封鎖日記には方方(ファンファン)さんの書いた武漢日記のような悲惨さはないが、西安の一部の状況を他の人に理解してもらうことはできるだろうと話しています。

西安市民 趙さん
「目を閉じてちょっと想像してほしい。1000万人以上の人口を抱える大都市なのに、車も人もほとんど姿を消した大通りの様子を。家の扉は閉ざされ、店も閉まって営業を止めている。これはどういう状況なのか。戦時中であってもこんな状況にはならない」

江雪さんは日記の中に「管理が厳しくなるにつれ、ひどいニュースが毎日のように流れてくる。ハイリスクの妊婦がお産の準備のために病院に行くことができないとか、腎臓移植後に必須の薬が買えないとか、建設現場が封鎖されて農民工が食事にありつけないとか、学生が街頭で飢えているとか…感染症対策によるさまざまな二次災害が頻発している。このまま行くと、人災が発生する可能性がないという保証はない」と記録しています。

日記の最後には、ウイルスはこの都市から命を奪ってはいないが、別なものがそれを行っている可能性は本当にあるのだと記されています。

 
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