台湾社会に広がる中共の浸透 蔡英文総統の護衛官も

ロイターは12月20日、中共のスパイ台湾軍に浸透しており、蔡英文総統の維安特勤隊(National Police Agency Special Operations Group, NPASOG)も例外ではないとの長編調査報告を発表しました。スパイ事件に対処するには、いったいどのようにすればよいのでしょうか。

12月20日、ロイターは特別報道「T-Day台湾のための戦い」(T-Day: The Battle for Taiwan)の第3部で、中共がスパイを使って台湾への浸透に全力を注いでいることを詳細に報じました。

ロイターの調査報告には、「史上最大のスパイ事件」と呼ばれる謝錫璋(しゃ・しゃくしょう)事件や前総統の右腕の孫翰方(そん・かんほう)事件から、蔡英文総統護衛官の王文彦(おう・ぶんげん)事件まで、複数の事例が挙げられています。台湾ではこの10年間で、すでに尉官以上の階級の軍人と警察官がスパイ罪に問われています。特に、蔡英文総統の維安特勤隊では、今年に入ってシークレットサービスと憲兵の2人が機密を漏洩したことで処罰されました。

台湾と中共政権の戦争が勃発した場合、台湾軍内部に潜むスパイが中共に情報を提供して中共が優位に立つことができますが、スパイが軍隊の士気に深刻な影響を及ぼすことは一般市民が気づきにくい点です。ロイターは、台湾問題を長年研究している元米海兵隊のグラント・ニューシャム(Grant Newsham)大佐の話を引用し、スパイが台湾の士気を下げることが分かったと指摘しました。これは上官がスパイ罪に問われると軍人の心理が影響を受けるからで、ニューシャム大佐は「リーダーの信頼感にひとたび疑いを抱いてしまったら、内部では腐敗が始まり、状況が悪化の一途をたどる」と指摘しています。

台湾国防大学政戦学院の元院長の余宗基(よ・しゅうき)氏は大紀元時報の取材に対し、中共は台湾に対し言葉による攻撃と武力による威嚇を行うほか、買収や浸透などによって台湾内部に親中勢力と協力者を増やして、「千里の堤もアリの穴から」のやり方で台湾の民主主義を内部から瓦解させようとしているとして、「これもまた、民主国家の最も脆弱な部分だ」と指摘しています。

一方で余宗基氏は、ここ数年で摘発されたスパイ事件は決して少なくはないが、立証が困難で証拠も不足しがちなため、最終的には軽微な求刑で終わってしまい、処罰が抑止力にならないこと、またその中の最も重要な理由は、台湾には国家安全保障分野専門の裁判所がなく、軍事情報や国家安全保障分野の経験のある裁判官もいないため、一般の刑事訴訟や民事訴訟の事件に照らして審理されていることだと指摘しています。

また、民事訴訟の場合は上訴したとしても、判決までに時間がかかって社会からの注目度が下がると、スパイ事件は尻すぼみに消えてしまいがちです。そのうえ、中共は巨額の金や報酬をばらまくことで台湾社会に浸透しているため、軽い処罰で済んでしまうと「中共の浸透を奨励しているに等しく」なり、今後も中共の浸透を受け入れる対象が増え続けて、台湾を危機に陥れることになります。

先日、台湾民進党の羅致政(ら・ちせい)立法委員らはすでに、『国家安全法』をはじめとする法律4件の改定と「国家安全保障専門の裁判所」の設置を提起しているほか、国家安全保障分野を専門に学んだ裁判官による審議を提起しています。現在この提案は署名を終え、立法院議事処に送られています。

余宗基氏は、台湾が国際社会の足並みについていけず、さらに浸透や情報分野での求刑が軽すぎると、台・米・日の合同軍事演習にも影響を及ぼすほか、同盟国間の情報共有や兵器の研究開発にも影響する可能性があると強調しています。よって軍事法廷の審理を強化することしか、台湾が直面している安全保障上の脅威に対する効果的な抑止力は生まれないと述べています。

余宗基氏は「中共の目的は非常に明確だ。武力で台湾を統一すれば世界からの反発を招くのは必至だが、買収や浸透、共感者や内通者を増やすといった方式を取ったうえで、軍隊を差し向けて内通者から降伏を後押しさせれば、血を流すことなく台湾を掌握できる。そうなったら国際社会は台湾を助けたくとも手を出せなくなる」と指摘しています。

 
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