中国政府が「戦略的資金援助」、アジアのパワーバランス変える=米報告書

米国務省に送られる第三者機関の報告書は、中国政府がアジア太平洋地区の発展途上国に「戦略的資金援助」を行っていると警鐘を鳴らした。債務不履行を見込んで相手国の重要な資源を支配下に置くというスタンスだという。中国の融資外交は、米国及び同盟国の影響力を低下させ、アジアのパワーバランスを変えてしまう可能性があると分析した。英大手紙ガーディアンが報じた。

ハーバード大学の専門家チームが作成した40ページの同報告書は、中国の戦略を詳しく分析した。

中国政府の「ターゲット」として、バヌアツ、フィリピン、カンボジア、ラオス、タイ、マレーシア、スリランカ、トンガとミクロネシアなど16の国をリストアップし、一部の国の関連事情を記録した。

パキスタンとスリランカは重要な港または軍事基地を中国政府に引き渡した。

豪州に隣接するパプアニューギニア、タイでは、この種の「債務抹消」がまだ本格的に起きていない。

フィリピン、カンボジア、ラオスは、東南アジア諸国連合(ASEAN)で中国の味方国に転向し、特にラオスとカンポジアは南シナ海の領有権争いで中国を支持している。

この種の戦略的融資は、中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」のもとで繰り広げられていると指摘。一例としてスリランカを挙げた。

 2007年10月に、中国の融資で着工したインド洋上の要所に位置する同国の大規模港・ハンバントタ港は、10年後の’17年、資産と経営管理権限が99年間契約で中国企業に移された。同港は将来、中国の海軍基地になりうる。

中国政府は南太平洋諸国も虎視眈々と狙っているという。オーストラリアから2千キロ離れている、債務超過危機にある人口24万人の小国バヌアツに、中国政府は永久的軍事基地の建設を持ちかけていると報告書は述べた。一方、両国は同事実関係を否認している。

報告書は米国政府に対し、インドを地区のリーダーに後押しし、日本やオーストラリア、インドと4カ国協力体制を強化するなど、同盟国との関係強化を助言している。

一方、オーストラリアも中国政府に対抗して、同地域諸国への経済援助を進めている。豪政府が最近公表した新年度財政予算は、人口わずか1.1万人の同地域のツバルに、840万豪ドルを拠出することがわかった。

 
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