ソニー、新中計は営業CFを最も重視 3年間で2兆円創出目指す

[東京 22日 ロイター] – ソニー<6758.T>は22日、2021年3月期を最終期とする3カ年の中期経営計画を発表した。計画期間中は営業キャッシュフロー(CF)を最も重視、3年間で2兆円以上(金融除く)の営業CFの創出を目指す。前中計期間中は1兆4802億円だった。

会見した吉田憲一郎社長兼最高経営責任者(CEO)は「(前中計から)5000億円を超える改善を計画しており、これまでソニーが達成できなかった安定した高いレベルのキャッシュフローを実現したい」と意欲を示した。

創出したキャッシュは、1兆円をイメージセンサーを中心とした設備投資に充て、残る1兆円は戦略投資を最優先としつつ、財務体質の強化と株主還元にも配分する。

株主資本利益率(ROE)は10%以上水準の継続を目指す。

部門別の営業利益目標は、ゲーム&ネットワークサービスが1300─1700億円(今期予想1900億円)、音楽が1100─1300億円(同1120億円)、映画が580─680億円(同420億円)、ホームエンタテインメント&サウンドが750─1050億円(同860億円)、イメージング・プロダクツ&ソリューションが850─1050億円(同750億円)、モバイルコミュニケーションが200─300億円(同150億円の赤字)、半導体分野が1600─2000億円(同1000億円)。

ゲーム&ネットワークサービスは減益を見込んでいる一方、半導体分野は利益の倍増を目指す。

吉田社長は赤字のモバイル事業について「スマートフォン市場はコンシューマーエレクトロニクスの領域では最大の市場だ」と指摘。「テレビやカメラだけでなく、モバイルというひとつのレバーを持っておくことは長期的には事業の安定性につながる」と述べ、「現状、事業を売却することは考えていない」と強調した。

ソニーはホームエンタテインメント&サウンド、イメージング・プロダクツ&ソリューション、モバイルコミュニケーションの3領域を「ブランデッドハードウエア」と位置付けており、前期に20年ぶりに最高益を更新する原動力となった。

吉田社長は「ブランデッドハードウエアは今後3年で最も安定したキャッシュフローを生む事業になると見込んでいる。ソニーが今後成長投資を続けていくためのキャッシュカウと位置づけ、いたずらに規模を追わず、プレミアム路線を堅持する」と強調した。

全体の営業利益計画は開示しなかった。吉田社長は「この3年間は利益成長よりも(継続的に収益を生み出せる)リカーリング比率の増加などで利益の質を高めることに軸足を置く」と語った。

ソニーは中期計画の発表に先立ち、200万曲超の音楽著作権を管理するEMIミュージック・パブリッシングを子会社化すると発表した。アラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンド、ムバダラインベストメントカンパニーからEMI株の約60%を約23億ドル(約2550億円)で取得する。

吉田社長は「これはコンテンツIP(知的財産)強化のための投資だ。音楽出版は収益が安定したリカーリング事業であり、この投資は長期的な成長に向けた重要な布石になる」との認識を示した。

ソニーはEMIの持ち分約40%に関する再評価益を営業利益に約1000億円計上する見込み。再評価益およびEMIの連結子会社化に伴う業績への影響は2018年度業績見通しに反映されておらず、現在精査中という。

<中計発表後に下げ足速める>

中期計画発表後、ソニーの株価は下げ足を速め、一時3%を超す下げとなった。

これについて、いちよし証券投資情報部課長の及川敬司氏は「ゲーム事業の先々の収益目標を嫌気し、瞬間的に売られたが、プレイステーション4が発売されてからずいぶん時間がたつ」と指摘。「(ゲーム事業は)累積販売台数に応じて発生するゲームのダウンロードや、会員型のビジネスを通じ、安定的に収益を稼ぐビジネスに変わってきている。必ずしもゲームが駄目というわけではなく、落ち着いてみればそんなに悪い内容ではない」との見方を示した。

(志田義寧 取材協力:長田善行)

 
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